「俺は嘘を吐かれるのが1番嫌いだ。」
静雄くんは正直で素直で心のままに生きている人だった。嬉しい事があれば笑うし、嫌なことがあれば怒る。それは簡単なようでとても難しいことだ。人間は感情を偽って生きている。泣きたいときや辛いときや苦しいときにも笑う人がいるから、上手な他人間のコミュニケーションを築きあげることができるのだ。だからさ、静雄くんは人とコミュニケーションを取るのが苦手だよね。少しいらっとしても暴力はあげちゃ駄目なんだよ?人は痛いとか怖いとか嫌いなんだから。
でも、私は静雄くんがときどき羨ましい。素直になんでも言えたり、表情に出したりできる静雄くんがすごく羨ましい。暴力で人を傷つけることができるのを羨ましいなんて言ったら怒ると思うけど、私はいくら自分が傷つくことを言われても人を殴る勇気なんて持っていないから。傷付くことを言われるのも怖くて、誰にも本音なんて言えないんだから。
「…よくわかんねーけど、今お前が言っているのは本当か?嘘か?」
「…静雄くんはどっちだと思う?」
数学の問題が解けない時のように難しい顔をして、静雄くんは方手で髪をくしゃくしゃにした。マックでも行こうか、今日は奢るよ。スカートの埃をはらって立ち上がると、まだ地面に座っている静雄くんが私を見上げた。
「お前は嘘つくような奴じゃねぇよ。」
他の奴に言えないなら辛いときは辛いって俺に言え。
立っているのは私なのに、静雄くんに差しのべられた右手は私を引き上げてくれる気がした。
image song 嘘つきの世界/初音ミク
20110611