仕事で遠出をして、本日一週間ぶりの帰宅。後味の悪い、嫌な仕事だった。もう辞めてしまおうなんて馬鹿なことを考えるくらい身体も精神も限界が近い。疲れきった身体を引きずるようにして自宅のドアを開けた。
「あ、臨也くんお帰りー!お仕事お疲れ様!」
「サイケ…まだ起きてたの。」
「臨也くんに頼まれた書類、どれだけあったと思ってんのさ?」
「そうだったね…うん。ありがと。」
臨也くんがお礼なんて気持ち悪いよ!とサイケが顔を引き攣らせる。酷いなぁと思いつつ言い返すのも億劫で、倒れるようにソファーに横になった。
「臨也くん、お仕事疲れた?」
「疲れたよ…。本当、しんどい。」
「何か食べる?波江さんのお料理、冷蔵庫に入ってるよ?」
「あー…名前に会いたい…。」
「質問に答えようね臨也くん。」
じゃ食べるなら自分で温めてねとサイケは書類整理に戻ってしまった。疲れてるんだから温めるくらいしてくれてもいいんじゃないかなぁ。質問に答えなかった俺も悪いけど。ああ、名前に会いたいなぁと思いつつ冷蔵庫の扉を開けた。
「…サイケ。名前来たの?」
「遊びに来てたよー。臨也くんがいない間に3回くらい。」
「…そっか。」
「臨也くんは一週間くらい帰ってこないからいいよって言ったんだけどね。でもお腹空かして帰ってくるだろうからって。」
冷蔵庫には、いつもうちに遊びに来るとき名前がお土産に買ってくるコーヒーゼリーが3つ。俺が美味しいと言ったらお土産はいつもそれを買ってきてくれた。俺がいないと知ってても、俺の分用意してくれてたんだ。
そう思うと心臓がぎゅううと苦しくなった。
「あーもう、なんだよこれ…。」
「臨也くん?」
「こんなに好きになるつもりなかったのに…。」
ずるずると身体を冷蔵庫にもたれ込む。そんなに好きなら早く言えばいいのに。顔を真っ赤にさせた俺を見てサイケが優しく呆れたように笑った。