強く吹き付ける雨の音を聞いて、窓の外を覗く。横殴りの雨は傘を指しても全く意味もなさそうだ。

 臨也がうちを訪問したのが一時間。この雨だというのにいつものコート一枚だけだった臨也は当然ずぶぬれだった。傘があってもなくても一緒だよと臨也は言っていたけど、連絡さえくれれば車で迎えに行ったりもできたというのに。

 そしてうちのお風呂を貸してあげたのが30分前。予想以上に長風呂で、私はかれこれ20分ほどドキドキしっぱなしだ。うちのお風呂を他人に、しかも男に、しかも好きな人に貸してドキドキしないわけがない。いつも自分が使っているお風呂に臨也がいるのかと思うと、掃除を怠っていたことを後悔してしまう。シャワーが床を打つ音だとかきゅっと蛇口をひねる音だとか、いつもは気にならない音がやけに耳につく。



「なにボーっと考えてるのかな。」


「っい、ざ!びっくりさせないでよ!」


「そんなつもりはなかったんだけど。あ、お風呂ありがとうね。」



 ふわりと隣に座る臨也の顔はお風呂上がりで少し紅い。まだ濡れた髪の毛からぽたりと雫が垂れるのをぼんやりと見ていた。ほんと顔だけは、かっこいいんだよなぁ…。視線に気付いたのか、ん?とこちらを向いた臨也とぱちりと目があって心臓がドキリと大きく跳ねる。思わずソファの端っこに逃げる。



「…なんでそんな離れたの?」


「別になんでもないので気にしないでください。ていうか臨也お風呂長すぎ。女子か。」


「まぁ俺くらい眉目秀麗だと色々と大変でさぁ。あ、名前ドライヤー貸してくれる。」


「ドライヤーならそこの棚の中に……って近い近い近い!!!」


「あはは、やっぱり照れてる。お風呂上がりの俺にドキドキしちゃった?」



 いつの間にかすぐ隣に来ていた臨也に腕を引かれそのまま抱きしめられる。どこかしっとりした肌に触れて、私の体温も熱くなった。名前の使ってるシャンプーいいにおいだよねと髪にキスをする臨也からふわりとシトラスの香りがして、まるでシャボン玉の中に二人包まれたようだった。






20110516

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