「今まで黙ってたけど、実は私、超能力者なの。」
「…はぁ?」
インスタントのカレーを二人で半分ずつして食っていると、名前は左手にもったスプーンを俺の目の前に差し出した。そのスプーンは綺麗に曲線を描いて曲がっている。…え、まじで?このスプーンはカレーを食うために俺が用意したものだ。その時は確かにまっすぐだった。……え、まじでこいつ超能力使えんのか?いやいやいや…
「…スプーン曲げくらい俺だってできる。おら。」
「静雄のはただ力入れただけじゃん。」
「…信じられねぇ。」
「じゃあ、右手出してよ。テレパシー使うから。」
持っていたスプーンを皿の上に置いて、差し出された名前の右手を握った。ちっさい手。少しでも力を入れてしまえば折れてしまいそうだ。
「心の中で強く私のこと考えてみて。」
言われた通りに名前のことを強く考える。名前。名前は俺のかのじょ。小さくてかわいい。料理がへたくそ。オレンジが似合う。結構ドジっぽい。だきしめるとふにゃふにゃする。いつもシャンプーのいい香りがする。キスをすると照れたように笑う。
「静雄、私のこと好きだなーって考えてたでしょ。」
思考回路停止。まじか。まじでこいつ超能力使えるのか。固まっている俺を見て、耐えきれないという風に名前はくすくすと笑った。イタズラ成功した子どものように。その姿を見て自分がからかわれた、ということに気付く。ごめんを繰り返す名前はまだ笑いが収まっていなくて、俺は顔が熱くなっていく。…好きって言って欲しいならそう言えよ、ったく。
エスパー少女は恋をする
20110418