春風と共に桜の花が舞う。それはまるで絵本に出てくる結婚式のフラワーシャワーのように見えた。へっくしゅん。隣を歩く幼馴染が大きなくしゃみをする。準太は桜アレルギーらしい。マスクを少しずらして鼻をかんでいる準太を笑うと、笑うなと怒られた。こんなに綺麗な桜の花粉に苦しまなきゃいけないなんて本当可哀想だ。



「今年も準太と一緒にお花見できると思わなかったなぁ。」


「毎年苦しむ俺を無理矢理連れてくるのはどこの誰だっけ?」


「えー?誰だっけ?」



 お前だよお前〜。ぺシリと軽く頭を叩かれる。だって準太は優しいから私が誘えば絶対来てくれるんだもん。素直にそう言えたらいいのに、私の口からは「準太が誘ってほしそうな顔してるからだよ」という言葉しか出てこなかった。へくしっ。また準太がくしゃみをする。



「もう私たちも大学生だね。準太もそろそろ彼女とか欲しいんじゃないの?」


「…別にいらねぇよ。大学入っても野球続けるし。」


「…えー。せっかく準太モテるのに。」


「俺には野球の方が大事なの。」



 私たちの隙間を主張するように、春風が吹きぬける。中学のときも高校のときも準太は同じことを言っていた。昔から準太は女の子が苦手なのだ。いつだったか、私は女なのに平気なのと聞いたことがある。お前は女って言うか幼馴染だから平気。短いけどその言葉は私の恋心に深く深く傷を付けた。私はずっと前から準太が好きだったから。

 今年も準太の隣で桜を見ることができた。今年も私と準太に春はやってこなかった。この世界は春の香りで満ち溢れていると言うのに。はくしょん。準太のくしゃみと風に舞う桜の花びらに、私の気持ちをこっそり隠した。




愛しさと悲しみを知った春

どうかどうか来年も
私たちに春がやってきませんように

20110327
title by hmr

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