しずかな部屋で彼女の寝息だけが小さく聞こえる。ソファーで眠る彼女の髪を撫でるとシャンプーの香りがふわりと鼻孔を掠めた。
 彼女の飲む紅茶に睡眠薬を盛ったのは自分なのに、目を覚まして欲しいと思う等本当馬鹿げている。
 眠りに落ちる前、俺の手を握って離さなかったのは俺がこれからすることを察知していたからなのかはわからないし、確かめることもできない。
 まだ握られたままの手を、優しく解いた。


 目が覚めて君と君の眠るソファー以外には何もなくなった俺の部屋をみて、君はどんな反応をするだろう。きっと泣き虫な君のことだから顔をくしゃくしゃにさせて泣くんだろうね。原因を作った俺が言うのも変な話だけれど、できれば泣いて欲しくないなぁ。もう君の涙を拭うことも抱きしめてあげることも俺にはできないから。
 携帯を開いて時刻を確かめる。そろそろ出ないと飛行機に間に合わない。彼女の髪をもう一度撫でて額に小さなキスを落とす。どうか俺のことは早く忘れてと願いを込めて。



「…おやすみ、俺の一番大切な女の子。」



20110225
ひとりの夜は怖くない、けれどあなたのいない朝が怖い
title by hmr
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