「…あら。めずらしい。」



名前は仕事が終わって自宅に帰ると、家を出て新宿で一人暮らしをしている弟がリビングのソファでぐっすりと眠っているのを見つけた。姉が帰ってきたにも関わらず起きる様子のないイザヤを見て、できるだけ音をたてないように名前は買ってきた食品を冷蔵庫にしまった。少し多めに材料を買ってきてよかったなぁ、と彼女は作業をしながら思った。


コトコトと鍋から心地のいい音が聞こえてきた。味見をするために鍋のふたをあけると、キッチンはコンソメの香りに包まれた。もう少ししょっぱくてもいいかな、と鍋の中に少しだけ塩を足した。



「なに?ロールキャベツ?」


「…起きたの?」


「俺未だに名前姉のロールキャベツしか食べれないよ。前に秘書に作ってもらったけどキャベツ無理だった。」


「もう子供じゃないんだから野菜も食べないと体に悪いよ。」


「今日食べるからいいじゃん。」



そういう問題じゃないんだけどなぁと名前は思ったが、言うのはやめることにした。きっとこれ以上イザヤに言っても無駄だろう。その代わり、今日はいっぱいおかわりをしてもらおう。夕飯ができるまで名前とイザヤは色々なことを話した。また危ない事ばかりしてるんでしょ?そういえばこの前静雄くんに会ったよ。ちゃんとご飯食べてるの?そういえば今日クルリとマイルは少し遅くなるって言ってたから先に二人で食べていよう。とか。久しぶりに会うと弟の生活の心配ばかりしてしまって、イザヤは名前姉はなんだか母さんに似てきたねと苦笑いした。



「そういえば。」


「なに?」


「おかえりなさいイザヤ。」


「……ただいま。」



少し照れたように言うイザヤが可愛くて、ああ全然変わってないと名前は思った。甘えたいときは頭に顎をのせてくるところとか、照れてる時は顔を見せないところとか、全部。両親はほとんど家にいないけど、兄妹でいる時間はどの家庭よりも多かった。イザヤが家を出て、知らないところで変わってしまうんじゃないかと思ったけど、彼は変わってない。きっとクルリとマイルが帰ってくればまた兄妹4人で前のように遊べるんじゃないかな。



「てゆうか、ひっさしぶりによく寝たよ。やっぱり実家っていうのはいいもんだね。」


「なら、もっと帰ってきなさいね。」


ここは貴方の家なんだから。
イザヤは少し考えたような顔をした後に、努力するよと気のない返事をした。


I'm home !!


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