好きになってしまってはいけない人を好きになってしまいました。身分違いの恋というわけではありません。彼に恋人がいたというわけではありません。彼が血の繋がった兄妹だったわけでもありません。私の好きになってしまった人は不死者だったのです。



「名前さん!」


「!」



今までずっと避け続けて、それでもとうとう見つかってしまった。ラックさんに名前を呼ばれた時は無意識に彼とは逆の方向に足は走り出していて、仕事中だったにも関わらずお店から飛び出してしまっていた。必死に走り続けたけど足の遅い私に追いつくことは容易い事で、ラックさんに右腕を掴まれた。ラックさんの顔を見るのが怖くて、後ろは振りむけない。



「どうして私を避けるんですか?」


「…………。」


「……私が嫌い、ですか?」


「!そんなこと……っ!!」



慌てて振りむけばラックさんは安心したように良かったと笑って私の頬を撫でた。久しぶりに会えた、大好きな人。頬を撫でる手が優しくて、胸が苦しくなる。お願いだから優しくしないで欲しいと、願ってしまう。



「避けられていたのは私なのに、どうして貴方が泣きそうな顔をするんですか。」


「………ごめん、なさい。」


「…私の気持ちを言うので、名前さんの気持ちも教えてくれますか。」


「…駄目です。言わないでくださ…。」


「私は、名前さんが好きです。だから避けられるのも辛い。…ずっと傍にいてもらいたい。」



好きな人に好きと言ってもらえる。それが嬉しいのに怖かった。私はラックさんと違って
普通の人間だ。当たり前のことが憎くて嫌になる。いつの日か必ず私とラックさんには別れの時が来てしまうのがわかっていて、私はずっとこの人の傍にいられるんだろうか。私には永遠の命なんてないのに。



「私怖いんです。ラックさんは不死者で、私はこれからどんどん老いていくけど、ラックさんはずっとそのままの姿でしょう…?私がいつの日か死んでも、ラックさんと天国でまた会いましょうなんて言えないんでしょう…?私が死んだら他の誰かがラックさんの傍に居続ける日が来るかも知れない。私だってずっとラックさんの傍にいたい、けどっ !」



頬に触れていたラックさんの手が後頭部に回されて、引き寄せられて少し荒っぽく口づけをされた。一度唇を離されて、また再び口づけられる。そんなことを何度も繰り返した。


「…確かに貴方と私にはいつしか必ず別れなければいけない時がくるでしょう。」


「ラックさん…。」


「それでも、私がこれから生きるであろう長い年月の中で、貴方と生きていく短い時間が、私の最も幸福な時間となるでしょう。…貴方じゃないと、駄目なんですよ。もう今の様な不安な気持ちにはさせませんから。」



ずっと傍にいてください。嬉しくて切なくて目の前のラックさんを抱きしめた。私がいなくなっても彼の人生は長く続いていく。きっと彼だって不安もあるだろう。もしかしたらそれは私よりもずっと大きな。それでも、それを二人で補ってずっと傍にいたいと思った。寂しさを埋めるように、ラックさんから命を吹き込まれるように口づけを繰り返した。





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