「美味しい!」
「……君って本当に美味しそうに食べるよねぇ。」
気が向いたから、久しぶりに料理を作ってみた。高校のころはよく自分や妹のぶんのご飯を作ったりしていたが、最近はここに住むようになった彼女にずっと任せきり。面倒くさいし、やっぱり好きな子の手作り料理は絶品なのだ。
「だって臨也さんが作ってくれるなんて初めてじゃないですか。美味しいに決まってますよ。」
「気が向いたらまた作ってあげるよ。」
「わ!ありがとうございます!でも急に料理なんて何かあったんですか?」
「……」
“あの子、『料理ができる男の人って素敵ですよね』って言ってたわよ。たまにはいい彼氏になってみたら?”
昼間、波江に言われた言葉を思い出す。たったひとりの女の子のために、俺らしくもない。だけど確かに俺は世間一般でいういい彼氏からは程遠く、いつも彼女を心配させてばかりだ。たまにはこんな風にいい彼氏を演じるのも悪くない。なにより彼女が嬉しそうだから、それでいい。
「…臨也さん?」
「…美味しそうに食べてくれるのは嬉しいけど、俺は君の作ってくれる料理がすごく好きだよ。」
「えっ?!きゅ、急にどどどどうしたんですか!?」
「別に?」
今日くらい素直になってあげようと思っただけさ。
ごちそうさま
(臨也が作ったのはオムライスというどうでもいい設定)
(甘いオムライスだったら可愛い)