酒は飲んでも呑まれるなと言う言葉をこの男はご存知なのだろうか。自分よりも大分重い身体をなんとか部屋まで連れてきて、ベッドに座らせた。まったく。だからあまり飲むなって言ったのに。今日は久しぶりに新羅の家でセルティを含め四人で鍋を囲んでいた。明日は仕事が休みとかで、静雄が飲むペースもいつもより早かったけど、まさか潰れるまで飲むとは。それでも怒ったりできないのは惚れた弱みというやつで、無防備に目を閉じて寝ている静雄の顔を見ていると苦笑が零れた。



「静雄。ほら水飲んで。」



「んー………」



冷蔵庫のミネラルウォーターをコップに注ぎ静雄に渡すと、素直にコクコクと飲んでくれた。なんか可愛いなぁ。今の静雄は普段より頬が赤く、目が半分寝ているようにトロンとしていて、正直えろい。いつものバーテン服もボタンが3つ程開いているし。って私何考えてんだあぁあああ。自分の考えてたことが恥ずかしすぎて、顔が一気に熱くなる。おそらく今の私の顔は静雄と同じくらい赤いんだろう。もう恥ずかしすぎて静雄の顔が見れそうにない。無事に静雄を送り届けれたんだから早く帰ろう。うん、それがいい。



「じゃっ、私もう帰るね。ちゃんと鍵かけてっ……?!」



静雄が持ちっぱなしだった空のコップを受け取ろうとしたら、腕を引っ張られて、気付けば静雄の腕の中にいた。身体が硬直する。ひっひえええ。私の目の前には、静雄の、胸板(ボタン3つオープン)。目の前というよりか、私の顔は静雄の胸に抑えつけられている。ひっぃいいい!!!!



「しずっ、静雄!!離してっ…!!」



「帰るな。」



「はっ…!?」



「……名前、かわい。」



少し顔が胸板から離されたかと思ったら、顔のすぐ横に静雄の顔。耳たぶに感じる柔らかい感触。ザワワワァァァと身体中に鳥肌がたった。ばくばくと心臓の音がはねる。耳たぶにキスを落とされたと気づくのに、そう時間はかからなかった。



「ひっ、ちょっと待って静雄!!」



「名前が帰るって言うから悪い。」



「やっもう、帰らないからぁっ!!」



静雄の唇が耳から徐々に下に降りてきて、首にたどり着く。時々ちゅっと静雄のリップ音が聞こえて恥ずかしい。いつの間にか私は静雄が座っていたベッドに押し倒されていた。まずい。頭の中で警報が鳴る。いくら静雄が好きでも、酔った勢いでそのままってのは嫌だ。目一杯抵抗をしてみるけど、静雄の身体はびくともしない。嫌だ嫌だどうしよう…!首にチリとした痛みが走る。静雄が顔を埋めていた首元に赤い痕が残されていた。



「静雄やめてよお願いだから!」



「……駄目。」



「やっちょっ待って……!」



「名前…………。」



好きだ。耳元で囁かれればもう抵抗なんてできなかった。今の静雄が酔っていて正気じゃないのはわかっていても嬉しかった。同じくらいに切なくもなった。
静雄の手がブラウスのボタンにかかる。ああ、もう駄目だ。そう諦めたとき、静雄の頭が顔の横に、身体の約半分が私の上に沈んだ。ぐえっ。何が起こったのか確かめようにも身体が動かせない。唯一自由に動かせる顔を静雄の方に向ければ、整った綺麗な寝顔がそこにあった。規則正しい寝息が聞こえてくる。これは当分起きないな思った。



「……………はぁ。」



助かった。安心したのか一気に力が抜けた気がする。良かった、うん。良かった。残念だなんて少しも、思って、ない。うん。すやすやと気持ち良さそうに寝ている静雄が少し恨めしい。目が覚めてまったく覚えてないなんて言われたらどうしようか。いや、そんなこと今は考えてもどうしようにもない。すべては静雄が起きてから。ネガティブになるのもそれからだ。好きな人が側にいる。今はそれだけでいい。少しタバコの香りがするベッドで、私も彼と同じように目を閉じた。おやすみなさい。どうか素敵な朝を迎えられますように。







(続くかもしれない)
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