四大の行方
「大精霊も微精霊と同様、死ねば化石となる。だが、力は次の大精霊へと受け継がれる!」
「……って、言われてるね。見た人はいないけど」
「あー、それね」
熱弁するイバルの言葉に付け足す黒髪の少年。その言葉を聞いて鳶色の髪の男は頬杖をつきながらそう言った。
「ふん。存在は決して死なない幽世の住人。それが精霊だ」
「だったら四大精霊は、あの装置に捕まったのかも」
黒髪の少年は頭に指を当てながらそう呟く。
『あの装置って、クルスニクの槍?』
「うん、そう」
先ほどミラから教えてもらった、黒匣で構成されたラ・シュガルの兵器であるクルスニクの槍。少年は四大たちがその中に捕らわれてしまったというのだ。
微精霊達を総べるあの大精霊を捕えてしまうなんて、とても想像できない。
「バカが!人間が四大様を捕えられるはずがない!」
そう言ってイバルはまた指をさす。ここまで話を聞かないとなると、もう注意をすることすら億劫になる。小さくため息をついたわたしに気付いたのか、鳶色の髪の男がわたしに小さく問いかける。
「もう注意しねえのな」
『おあいにくだけど、何度注意してもきかないバカの相手ができる程人間が出来ていないから』
「おたくも大変だな」
『ほんと、バカの世話は大変よ』
くつくつと笑う男にそう返す。
「けど、その四大精霊が主の召喚に応じないんでしょ?」
鳶色の髪の男の横で未だに指を頭にあてている黒髪の少年は言った。訝しげに自分を見るイバルなど構わずに少年は続ける。
「ありえないことでも、他に可能性がないなら、真実になり得るんだよ」
「何もない空間で、卵がひとりでに潰れた場合、その原因は卵の中にある……」
『ハオの卵理論…』
男の言葉を聞いて浮かんだ言葉を呟く。
「そゆこと。さっすが優等生」
『うん、あなた頭良いのね』
確かに、普通ならその考えには至らないだろう。少なくともわたしはそうだ。この少年が優等生なのかどうかはさておき、どうやら頭の回転は速いらしい。