懐かしい気持ち
『まったく…ほんっと手のかかる幼なじみね』
「俺だったらあんなめんどくせぇヤツの世話なんざできねぇな」
『…まぁ、それでもわたしの家族みたいなヤツだし。ほっとけないって言うか。でも良い所もあるのよ?』
「ふーん…」
なんだかあからさまに嫌な顔をされた。なぜだろうか。
(男の人…っていうかこの人がよくわかんない)
『…あ、そういえばあなた達の名前まだ聞いてない』
「あー、そういやそうだな」
聞いていないといえば少し語弊があるかもしれない。一応社の中で話している時に何度か名前を耳にした気はするが、特に気に留めていなかったので覚えていないのだ。
「俺はアルヴィン。で、こっちが優等…」
「アルヴィン!…僕はジュード・マティスって言うんだ。ジュードでいいよ。よろしくね、えっと…」
『わたしはルディ。ルディ・ミーストンよ。わたしの事もルディと気軽に呼んでもらって構わないわ。よろしく』
きっと優等生というあだ名で紹介しようとしたであろうアルヴィンを制止して、ジュードは自己紹介をしてくれた。
(よろしくって言っても、ここだけの縁だろうからたいして意味はないと思うけど)
目を伏せて心の中でそう呟く。視線を上げるとアルヴィンが森の方を見ていて、その表情は少し険しい。
『アルヴィン?』
「ん?ああ、どうした?」
『いや…森の方をじーっと見てたからどうしたのかと思って』
わたしも森へと目を遣るが、特に何も見えない。何か気になる事でもあったのだろうか。
まさかあの馬鹿巫女が裸踊りでもしていたというのか。もしそうなら見逃してしまった事を後悔する。一生ヤツをいじるネタにできたというのに。
「…お前が思ってるような事じゃねぇから安心しろ」
『え!わたし何も言ってない!』
「顔に出てんだよ」
そう言ってアルヴィンはわたしの頭をコツン、と叩く。それがなぜか懐かしく、切なく感じた。
(なんでだろ…)
記憶が無いと色々不便だしもどかしい。今日の頭痛も気になる。
「二人とももう少しここにいるか?」
わたしが腕を組んで考えていると、アルヴィンがそう尋ねてきた。
「うん」
『わたしも…ミラを待とうかな』
「んじゃ、俺は先に戻ってるわ」
ジュードとわたしの返事を聞いたアルヴィンはそう言って村へと歩いて行った。