朝、いつものように神威団長を起こしに行って首を傾げた。


「…7位?」


神威団長の横たわるベッドの上に、7位と↓が浮かんでいた。





原作第二百六十五〜二百六十八訓、ルルルの場合





とりあえず7位の7をつっついてみた。


つんつん


もっかいつっつく。でも7位はびくともしない。しばらくツンツンしていたら、


「うわぁ!」


団長が勢いよく飛び起きたのでビックリして後ずさる。


「こしょば!」


そう言って頭をガシガシする。


「神威団長…」

「あー名前おはよー、ツンツンしてたでしょ」

「はい…それ何ですか?」

「人気投票の結果だよ」

「人気投票?」


そうだよと神威団長はまだ覚醒しきれていない顔をこちらに向けて、


「アレ?名前のは?」


そう呟いた。


「え?あたし…?」


周りを見回してみても何もない。


「…ないみたいです」

「んー…名前は別の世界の人だもんね」

「…そっか」

「よし、おいで」


そう言うと髪も結わずにあたしの手を引いた。部屋を出て通路を歩く。


「…あ」


すると気付く。団員たちの周りに張り付いたように浮かぶ順位と矢印。と何だかピリピリとした殺気のような…。
そうやってキョロキョロしながら歩いて行くとある扉の前で立ち止まる。神威団長は迷いなく扉を開く。


「阿伏兎おはよー」

「おはよーございます」

「…おう、もうそんな時間か」


そこには疲れた顔の阿伏兎さんと書類の山。ついでに阿伏兎さんの頭上に張り付く28位と↓。


「ちょっとハサミとマジック貸して」


神威団長はそう言うと赤いマジックと紙を引張り出す。何かを書き出した。
それを鼻歌まじりに切っていく。


「でーきた」


その出来上がったものをあたしの頭の上のあたりでゴソゴソとしながら、


「うん、こんな感じ、どう?」


その言葉に首を傾げると、


「…いいんじゃないすか」


阿伏兎さんがニヤリしながら言う。


「はい」


団長に鏡を渡されて覗き込むと、


「…っ」


赤色の1位と↓が頭上に浮かんでいた。


「お、おー…あたし、い、1位でいいんですか…」

「うん、名前が一番」


曇りなき微笑みがそこにあって思わず赤面した。





-----**





ぴょんぴょんしながら1位の文字を鏡越しに嬉しそうに見る姿はどこか可愛らしい。
可愛さなら間違いなく名前が一位だと思う。
俺はそれを見ながらさらにマジックとハサミを駆使して文字を切り出す。
出来上がったそれを名前が気付かないように背中の方に設置する。


「よし」

「…いいんじゃないすか」


阿伏兎がニヤリして言う。


「でしょー」

「え?何がですか?」

「なんでもないよ気にしないで」


名前の背後に浮かぶ文字に満足気に頷く。


←俺の女
 手出ししたら殺す
 by団長


名前が動くと文字も動く。うまいこと名前に見えないようにクルクル動く。

この後、自分の順位を少しでも上げようとする団員たちの血みどろな戦いが繰り広げられることになるのだが、名前は傷一つ負わず、頭上の1位も背後の文字も暫く名前は引き連れていたとか。










誰が何と言おうと名前が一番

当然の結果だよネ









萌えるべきは順位にこだわらない兄貴と阿伏さんである。
20091113白椿