「あ、団長見て下さい!まだこんなに明るいのに月が出てますよ!」
「ホントだ。なんでだろ?月って夜に出るはずなのに…」
「間違って早く出てきちゃったんですかね?」
まだ昼の3時過ぎ。こんなにも早く月が出るなんて珍しい。団長と地球に来て、一週間が経った。元老(うえ)が『ちょっと気晴らしに地球にでも行ってきたらどうだ?』と言うので来てみたが、明日にはもう帰らなければいけない。本当に気晴らし出来た、仕事から解放された一週間だった。
「月って夜に出るものだけど、昼に出ても綺麗ですよね!」
「うん、神秘的だよネ」
あ、初めて団長と意見が合った。普段は全くもって反対の意見ですれ違っていたのに…地球に来た所為かな?なんて思ったりもする。
「さて、そろそろ帰る準備をしないとネ。また元老(うえ)に怒られちゃうよ」
私達は帰る支度を始める。今いたのは寝泊まりさせてもらった宿の庭。2人で座っていたベンチが名残惜しく感じる。宿内に入り、鞄に荷物を詰める。私の荷物は行と同じ様になるが、団長の荷物は収まりきらなくなっている。それを押し込めている団長。なんとも微笑ましい。
「それにしても一週間経つの早かったですね」
「あっという間だったネ」
「のんびりできたし!阿伏兎さんも連れて来てあげればよかったな!」
「俺は阿伏兎を連れて来なくてよかったと思うよ?」
「何故ですか?」
「だってこうやって2人っきりで楽しめないじゃん」
そういう団長の顔はいつもと同じ笑顔で、きっと私は今顔が真っ赤なんだと思う。こういうことをサラっと言われるとこっちが恥ずかしくなってしまう。
「よし、荷物もなんとかなったし行こうか?」
「……はい」
私は恥ずかしくて団長の顔を見れなかった。私は今も下を向いているが、まだ顔の熱は引いていないと思う。そんなことを考えていると、歩いていた団長がいきなり足を止め、こちらを向いた。私は気になったので顔を上げた。
「どうしたんですか?忘れ物で…んっ」
一瞬思考回路が止まった。今、私は何をされている?神経が口に集中する。あ、キスされているんだ。そう思うと身体の熱が一気に上がる。ゆでだこ状態だ。団長の唇が離れたことを確認し、自分の唇に触れる。
「いいいきなりキスするだなんて!どどうしたんですか、団長!?」
「別に、したかったからしただけだヨ。」
そう言うとまたニコッと笑って歩きだした。あぁ、お月様、私はどうしたらいいのでしょうか…私は静かに月を見上げた。
月の光る青空に
団長、いきなりのちゅーは恥ずかしいです。
なら、言えばいいんだね?
Thanks.結城伊代さま