私は強さだけを求めていた。だから、愛だと恋だとかそんなものは地球人とか…存在するかわからないけど火星人とか弱い奴らがするものだと思っていた。



私の種族は、夜兎ほどの戦闘種族ではなかったが中々強い種族だった。私はその中で人よりも強靭な身体と腕力をもっていた。だから物心つくころには、自分の才能を活かし無心に人を殺してきた。そして、あまりの強さに仲間は恐れと畏怖の眼差しを私に向けるようになった。


そんな戦いだけを生き甲斐にする私だからこそ 私が彼にあった時も彼が春雨の元老に命令され、私達の種族を殲滅しにきたときだった。


彼は、たった一人で数百人もいた私の種族をためらいなく殺していった。倒れていく仲間をみながら私も彼に応戦したが、気がつくと私はかなりの深手を負い、仲間は全滅していた。『絶対絶命』そんな言葉が頭をよぎった。


しかし、彼は私を殺さず意外な言葉をいった。


「君、強いね。どう?俺と一緒にこない?」


先程まで戦っていた狂気を浮かべていた顔はどこへやら。彼は満面の笑みを浮かべ、言った。誰も私に笑顔などむけやしない。だからだろうか、その顔は私の脳裏に鮮明に映った。


私の足は無意識に彼の元へ向かった。


多分、私はこの時にはもう彼に恋していたのだとおもう。









団長も強さだけを求めていた。



団長は強くなるためには、親・師・妹にも手をかけた。ただ一心不乱に強さを求めていた。だから、彼の目に映るために私は強さをみがいていった。


この第七師団に入り、何年も経ったが団長が変わることはなかった。私も変わることはなかった。


団長との会話は、どう戦うとか 強い奴の話だった。


でも、私はその会話だけで嬉しくて嬉しくて。団長がいつもみせる笑顔が好きだった。私は、この瞬間が長く続けばと願わずにはいられなかった。





ある日、団長が地球から女の子を拾ってきた。



彼女は強さなんて求めていなかった。



彼女は、どんな人にも優しく、殺すことに恐れを抱いていた。団長の求めるものとは真逆な人間。そして、私と真逆な人間。


それから、程なくして団長は変わっていった。


その変化に、最初は気づけなかった。


でも、段々と……そして確実な変化だと気付いた。団長は無闇に人を殺さなくなったし、以前より団員に優しくなった。彼女が団長を変え始めたのだ。



そして、団長と彼女、本人同士は気づいていないが互いに愛しあっていることに気付いた。


ある日 彼女が、はにかみながら団長に愛を囁くのを聴いた。「神威さん、好きです」………と。囁かれた後の団長は私に向けることのない優しい笑顔を彼女に向けた。


私は、その笑顔を見て団長に恋をしているのだと気付いた。そして、愕然とした。ああ…。私は彼女と真逆。彼女のように、団長を変えることなどできない。そんな笑顔みることができない。つまり団長が私を好きになることはない……。


だから団長、お願いです。戦いだけを求めていた 前の団長に戻って…


それなら、あなたは強さを求める私だけを見てくれるでしょう??好きにはならなくとも、私だけをみるでしょう??だって私は強いから。


お願い。彼女だけをみないで…
お願い。私をみて。前みたいに戻って、優しくなくてもいい…どれだけ人を殺してもかまわない


どうか、お願い…変わらないで





ふと思うことがある。私も、彼女のように愛を囁こうかしら。…………と。



「団長、好きです」


と。…………その時 あなたは、私をどう見るんだろう。


愛の言葉をもらって


喜ぶ?悲しむ?怒る?


いや、私はわかるよ。あなたはきっと大きく目を見開いて驚くだけでしょう。同じく戦いだけに生きてきた私の変貌にただただ驚くでしょう。


だって、あなたにとって私は、ただの団員だから。ただ強いだけの団員だから。






私は、しがない強さを求める第七師団の団員。


私は彼女とは真逆。


たった一つ同じなのは、私も彼女と同じように以前自分が嫌っていた恋をする弱い

火星人のような目つきで



彼を見つめることだけ。





Thanks.れみさま