ピンクの髪に三つ編み、人懐こいような笑顔を携えた彼はわたしの唯一の太陽だった。ここ吉原に太陽なんてもんは存在していなくて、あるのは闇だけ。それも真っ暗な救いようのない黒。だけどある日突然彼はやってきたのだった。にこにこと笑顔を崩さない彼はびし、とわたしを指差してあんたがいいと言い放った。わたしでございますか。うんそう、あんた。笑顔のままわたしの手を引き襖をパタンと閉めた。依然彼はにこにこと笑顔のまま。最初はその笑顔が怖かったけれど、次第に怖さもなくなり今ではその笑顔さえ愛おしいと思う。でも、わたしは遊女なのよ。愛おしいなんて感情棄ててしまわなければ。彼にとってわたしは遊びなの。物思いに耽っていると、いつもの笑顔が店に訪れた。

「やあ久しぶり」
「お久しぶりでございます」
「いつものよろしくね」
「畏まりました」

そして定位置になった部屋にお酒をお持ちする。失礼しますと言って襖を開けると待ってたよと彼は笑った。とくとく。お酒を注ぐ音が静かな部屋に響いた。彼が一口目を飲み干すと、お猪口を机に置いてわたしにぐいと顔を近づけた。

「ど、うなさったのですか」
「あんたさ、綺麗だよね」
「、え?」
「だから、壊したくなっちゃうんだ」

にこにこ、やっぱり笑顔は崩さないまま彼は言った。どういう意味かなんて考えたってわからないけれど、なぜか穏やかな気分だった。

「…神威さま」
「ん?」
「神威さまの好きなようになさってください」
「いいの?」
「はい」















Thanks.麻那さま