太陽の力は凄いと私は思う。気温が低くて寒い今日の江戸が太陽のおかげで随分
温かく感じるのだ。バイトに行く途中のこの道ももちろん温かくて何かテンショ
ン上がって小石を蹴ったら自分の脛に当たった。痛い、周りの視線が。


「おい」
「…げ」
「見ちゃった〜」
「…は、は?何を」
「誰にチクろうかねィ」
「な、何言ってんの?チクる事なんかなくね?何もなくね?」
「お前が蹴った石が自分に、」
「ああああもういい分かった!!分かったから誰にも言うな!」
「それが人に物を頼むときの態度か?もっとあんだろィ」


こいつの力は凄いと思う。せっかくテンション上がってたのにこいつのおかげで
一気に激下げだよちくしょう。しかも早くバイト行かないと送れるんだけど。こ
いつ、沖田はめっちゃ楽しそうに私を見下ろしている。敬語使えってか?

「…えーと」

「さっきのはみ、見なかったことにしてほしいなあーとか…」
「聞こえねえぜィ」


ちくしょうオオ!!使いたくない!使いたくないよこいつに敬語とか絶対無理!
……あれ?でも何で私そんなに言ってほしくないとか思ってんだろ。別に言われ
たとしてもふーん、程度で終わるんじゃないのか?笑われるとしてもその時だけ
じゃんか。そうだ、沖田の言い方に乗せられたのか私は。


「やっぱいいや」
「あ?」
「別にそんくらい言ってもいいよ」
「………」


そう言うと沖田は楽しくねえと呟き不機嫌な顔になった。いやいや楽しくないっ
て言われても、別に楽しんでねなんてこっちは一言も言ってない。


「じゃ、私バイトあるから」
「オイ、誰が行っていいつった」
「……は?」


え、あの、私事に他の人の許可いるんですか。ていうか何で沖田に腕捕まれてる
んだろう。早くバイト行かないとこの前も遅刻しちゃったし、店長に怒られる。


「は、離せ」
「うるせえ」
「は?!う、うるさいって何…うわ!」


ぎゅう、と音が出そうなくらい強く抱き締められた。………だきしめられた?え
?私今抱き締められたって言った?…抱き締め、られた?


「いっつもすぐ離れて行きやがる。むかつきまさァ」
「お、き…」


た、はこいつの唇によって塞がれた。こんな道端で何やってんだ私たちは。けど
嬉しくないって言えば嘘になる、本当は凄く嬉しいかもしれないよ沖田くん、責
任取ってよね。後バイトも。


太陽を包み込む温かさ





Thanks.ロルさま