昔は……といってもそんなに前じゃないけど、いろいろやった。

血にまかせ戦いに身を投じて、たくさんの血をみてきた。

不思議とね、何で悪いかとか何にもわからなかった。


大事なもの、なんて何もなかったしね。


少なくとも、昔の俺には。



「かぁーむぅーいー」



彼女に会うまでは、ホントに何も分からなかったんだ。

いや、知ろうとしなかったんだ。



彼女と初めてあった時は、なんて弱いんだろ?って思った。

地球人だし。


でも、彼女が笑うと何でかこっちまで笑顔になって。

俺の冷たいキモチがホクホクにあったかくなる事に気付いた時は、正直焦った。

今まで血で戦ってきた自分が間違っていて、否定されてる気がしてね。


自分は弱くなるんじゃないか、って。



だけど、それは違ったね。

このキモチも、あったかさも…………………

そして、本当の強さも君が教えてくれたんだ。

気づかせてくれたんだ。

君は、俺には見えていなかったものを、見せてくれたんだ。



「神威?大丈夫……?」

「え?あぁ、大丈夫だよ」

「バカ兄貴、心配かけてんじゃねーヨ」

「あり?神楽、心配してくれるの?」




あ、照れた。

一度失った家族も、




「こら、」

「いったー!銀さん、何も殴らなくたって……!」

「晩御飯が卵かけご飯って……朝も卵かけだったよね?なにこれ、苛め?だいたい卵は1日一個じゃないとコレステロールが半端ないんだよー?銀さん死んじゃうよー?ってかこれじゃぁ、神楽と変わんないよー?」

「うぅっ」




居場所もくれて。

なくしたものを、もう手にはきっとできないと思ってたものを……再びくれて。



「お侍さん、俺の彼女に何すんの?」



……ありがとう、



「神威!?だ、大丈夫だよ?」


感謝してるよ、君に。

もちろん、もう一度チャンスをくれた家族に、



「ちょ、神威!!ちょっと小突いただけじゃねーか!落ち着け、落ち着いて話し合いしようじゃないか、神威くん。ね、ちょ……話しあ、おま、こっちにくんじゃねェェェ!!」



今、俺が近づくと逃げるお侍さんにも。

もー、近づいただけで逃げるなんてひどいなー。



「小突いただけ?へー、なら彼女の変わりに俺が同じ事してあげるね」




でもね、お侍さん。

俺の大事な子に手を出した罪は重いよ?

俺、そこまで心は広くないからね。

って、卵かけご飯の何が不満なのかな?




「お、おい……冗談、だよな?ちょ、お前のは小突くじゃすまな、ギャァァァァァァ!!!」

「あはは、大げさだなー」



そんなオーバーにされると、ちょっと傷ついちゃうぞ。



「兄ちゃん、銀ちゃんがピクリともしないアル」



「あり?ほんとに?」



神楽と一緒にお侍さんをつつく彼女の顔色が悪い。



「神威……銀さんが、」



俺も近づいてお侍さんをつついてみる。



「お侍さーん?おーい…………あらら……」

「あらら、じゃないよー!!!どうするの!!?銀さーん、おきてー!!!!」

「銀ちゃーん、銀ちゃんの分食べていいアルかー?」

「いいんじゃない?あ、俺にも分けてね」

「二人とも!銀さん運ぶの手伝ってよー!!」



新しい家族。

あったかいね。





真っ暗な中で

(一度、冷たい暗闇を知った俺は)
(君という太陽に出会えたんだ)
(もう、二度と暗闇に戻ったりはしない)





Thanks.cherrybeさま