#8


でも。こんな俺にも、
群れからすっかりはみ出てる俺にも親友がたった一人いる。
大事な大事な親友の「しー」。

俺は物心ついたころから絵を描くのが好きだった。
漫画家になる。ただの漫画家じゃない。凄い漫画を描いてる、めちゃくちゃ有名な漫画家になること。
幼稚園のときも小学校の時も変わらない俺の夢。
その俺の夢を唯一バカにしなかったのが、しーだった。
俺の描いた漫画を毎日たのしそうに読んでくれた。いつだってその目をきらきらさせて「ゆう、これすごいおもしろい!」って笑ってくれた。

しーと友達になるまでは俺はずっとオチのないギャグ漫画を描いていた。けれどしーに漫画を見てもらってしーの笑顔を見ているうちに、しーを漫画の世界に登場させたら、もっと喜んでくれるって思った。

だからしーを描いた。
その世界でのしーは勇者だ。何も装備していないけどとても強く、魔法も使える。国中に仲間がいて、竜の群れだってしーを見たらみんな頭をたれて挨拶するすごい勇者。そしてその勇者と一緒に旅するのが俺だ。弓を持ってる。そして剣も使える。魔法は出来ないけど、妖精の友達がいて変な模様の手からその妖精が飛び出し魔物をやっつけてく。

初めてその漫画をしーに見せた時のしーの興奮は今思い出しても笑える。
俺の顔と漫画を交互に何度も見て、しーは「嬉しい」と涙声で言って俺にぎゅっと抱きついた。俺も嬉しくて泣いてしまった。

優しくて明るくて大事な大事な親友。
しー。
大好きな、しー。



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