#16

靴箱に凭れるしーは、俺をじっと見ている。

「しー、俺しーのこと好きだ。」

「知ってる。」

「違う、そういうんじゃなくて好きなんだ。」
友情と愛情のボーダーラインを超えたのはいつだったろう。いつからこんなに好きだったんだろう。でももう後戻りできそうになかった好きなんだ。大好きなんだ。しーのこと。
しーの服の裾を力いっぱい掴む。見上げるとしーがカ指先だけで俺のあごを柔く撫でた。

「知ってる。」
そうして俺のかさついた唇の端っこにしーの熱い舌が這う。
「ちのあじする。」
信じられなくて目を瞬かせるとまたしーが笑った。

「どうして・・・」

どうして俺が隠してた「中身」に気付いてるんだ。どうして?今したことの意味は?


「どうしてって・・・あの時からずっと知ってる。気付くにきまってるだろ。」
ずっと?どうして?でも俺の喉はカラカラに乾いて、上手く言葉が出てくれない。
しーの傷だらけの顔が俺の目の前に近づいてくる。
俺は必死で背伸びをした。


しーは言った。
ボーダーラインを越えた俺の隣で呟くように言ったんだ。




「お前の目、俺しか見てなくてすげーんだもん。」




【END】

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