#13



「・・・・」
「うぅわあ!まじでマッシじゃん!!!顔の傷の位置全く同じ。つうか、同じすぎだろ、お前きっしょすぎんぞ。やべええ」

「・・・・」

「もしかして、お前、あんだけ苛められててマッシのこと好きなの?」
「・・・・」
「うぅわ、顔真っ赤になってんじゃん。きめー。デブでオタクでマゾでホモかよ。人生詰みすぎだろ。」
方々で悲鳴が上がる。気持ち悪いと口々に俺を非難する。

散らばった原稿を書き集めようと両手を広げたけれど、寸前で御鷹が全て取り上げた。

「マッシに見せてやろうぜ。きっと喜んでくれると思うし。だって、他は下手くそな絵なのにさ、マッシだけ気合い入りすぎだろ。恋する瞳で見るとそうなるのかなぁ〜」

「やめろよ・・・」
見たらきっともっと嫌われる。もう何年もちゃんと喋れてない。会話らしい会話をしてない。もう友達でも何でもないのに。向こうは顔を見るのもきっと嫌なはずだ。だから、俺を突き飛ばしたりいじめたりするんだ。
俺が嫌いだから。俺がいらつかせる存在だから。
なのに。俺はそれを十分に知っていたのに、高校選択の時、外部を志望しなかった。しーが嫌がるのを知ってて、しーと同じ付属高校にあがった。
だって、か細くてもいいから繋がりが欲しかった。繋がってたかった。


自分でも分かってる。
もう戻れないって。だって俺がめちゃくちゃにしたんだ。
優しかった、しーを変えちゃったんだ。
なのに。

戻れるわけがない。

だからせめて、漫画の中だけでも一緒にいたかった。
しーとずっと一緒にいたかった。そうして、紙の上の世界ではずっと一緒に旅をしてたんだ。十何年も旅をしてたんだ。


「ほんと、きめーよ、お前。マッシだってさあ・・・」

お前には分からない。いつだって、しーにべったりの御鷹にわかるもんか。
いつもいつもベタベタしやがって。
しーのカッコイイ顔、間近で見てる癖に。
あの笑顔を見てる癖に。
しーが退屈そうな時に面白い話ひとつできないくせに。
しーが寂しそうな時にちっとも気がつかないくせに。


涙があふれた。鼻水もずるずる流れる。
みんなが俺の顔を見て笑った。

笑いたければ笑えばいい。でも、
その紙の上の世界だけは俺のものだ。
俺としーの世界なんだから。

よろめく足を叱咤して、立ちあがる。

体をぐっと丸め、腕を交差する。肘の尖ったとこををバッファローの角のように立たせる。

俺は生まれて初めてこれ以上ないってくらいの大声をあげた。

「うああああぁぁ!!!」





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