#3

「何をしてるんだ?」
低い声。その三白眼に近い鋭い瞳は今にも炎が噴きだしそうにに怒りに満たされていた。言い訳なんかできない状況に立たされてる。
「・・・・」

けれど俺はそんなことよりもなによりも、仲島の頭上に目が釘づけだった。
仲島の黒い固そうな黒髪をかき分けるように、茶色くてモコモコで三角の・・・そう、柴犬みたいな耳がぴょっこり生えていた。

「貴城(タカシロ)、なんとか言えよ。これをどうするつもりだったんだ?」
俺から取り上げた書類をこれ見よがしに目の前でヒラヒラ振られる。
でも、そんなことより「モコモコ」だ。
なんかの罰ゲームだろうか?いや、でもなんかリアルすぎないか?

顎に手を当て首をかしげる。
「貴城!」
仲島の声がどんどんでかくなってくのもそっちのけで身を乗り出し、そして若干背伸びをしてその耳をはしっと掴んだ。
モッフ!

少し固めのでも温かい感触。モッフモフ。
「おい、何をしてるんだ、さっきから。」
さすが会長様。俺の突然の行動にも顔色一つ変えてない。
「えっと・・・あ〜」
ごまかす様に肩をすくめる。けれど、そんなことで許してくれる優しい会長様ではない。

「お前、ふざけてんのか?」絶対零度の冷たい声。

ああ、やばい。また嫌われた。
もうすでにこれ以上ないくらいに嫌われてるだろうけど、それ以上に嫌われたくない俺は慌てて仲島から距離をとるために後ずさった。
「わ・・・・」
けれど先ほど散らばらせた書類が思いのほか滑り、

「おい!何して・・・」
俺の足は見事にもつれ、咄嗟に目の前の太く硬い腕を掴んだままひっくり返った。
「うわっ!」


「・・・・」
次に来るだろう衝撃に備え固く眼を閉じたものの、覚悟していた痛みは無かった。

おそるおそる目を開ければ 仲島の目が間近にある。

真黒だと思っていた瞳は良く見ると深い紺碧のように光を弾いていた。

「・・・・お前、何してんだ。スポーツ推薦で入った癖につくづく鈍くさいバカだな。」

皮肉気に歪められた口元、嫌悪の顔。その癖、仲島は自分を下敷きにして俺を庇ってくれた。冷たく硬い声色とはまるで正反対に、優しく俺の腰に回される大きな手。

その能面のような顔とは対照的に、三角の耳はぺっとりと伏せられていた。



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