#4


「しつれーしまーす。」


快活な声とともに貴城が生徒会室に入ってくる。そうして当然のように俺の席の横に椅子を寄せてぴっとり体をくっつけて「和登(かずと)、おはよ!」とこちらを覗き込んでくる。
正直言うと・・・めちゃくちゃ可愛い。
何だ、その笑顔。
白い尖ったエナメル質の歯が唇から覗いてるのを見て、色々思い出してますます俺の体に電流が走る。名前で呼んでくれるようになってからもう一カ月以上経つのに、慣れる気が全くしない。
そのあまったるい声で呼ばれるたびに毎回胸が苦しくなる。俺、そのうち胸が破裂して死ぬんじゃないだろうか?
「・・・おはようじゃないだろ。もう昼だ。それに何しに来た、書類は?」
しかし心と体は裏腹に俺の声は低く冷たく、口調もそっけない。ああ、またやってしまった。
さすがに怒ったかもしれない、嫌われたかもしれない・・・こわごわ顔を上げると、俺の予想とは逆に貴城は笑顔だった。
なぜか俺の頭上と俺の背中をあたりを確認してうんうんと何度も頷いている。
「・・・おい、聞いてるのか?」
頭と背中にゴミでもついてるのかと体をよじり、手を伸ばし確認するも、「なんもついてないって。」と言われる。
何もついてない。
毎回そう言うけどじゃあどうして・・・。やっぱ俺の顔がロリコン向けじゃないから目あわせたくないのか・・・でもそれなら、どうして毎日毎日・・・セッ・セッ・クスしたがるんだろう。もしかして俺の体だけが目当てなのか?
色々不安になって、でも言えるはずもなく「それならいい。早く仕事に戻れ。」とそっぽをを向く。不安になってるならもっと好意を見せたらいいのに、可愛気をどこかに落としてしまった俺はまるで反対の態度をとってしまう。こんな態度ばかりとってたら、貴城だって・・・・

「なあなあなあ、和登、俺ここに何しに来たと思う?」
「何って・・・」
俺に会いに来てくれたんじゃ・・・

「後輩君が最近元気ないから心配になってきたんだ〜」
「なっ・・・」
ガァンと頭を殴られたような衝撃。あうあうと言葉にならないまま慌てて貴城に視線をやれば、貴城は俺の隣から書記の篠田の席に移動していた。しかも・・・しかも・・・篠田のごつい固そうな膝の上にのって篠田の腕を自分の腹のとこに回させてる!!
そうして近くにいたアイドル似の上原の腕をひっぱって自分の膝に乗せた。
篠田は貴城と同じサッカー部で俺の気のせいじゃなくかなり仲が良い。そして前述のとおり、上原はめちゃくちゃ可愛い。貴城のタイプど真ん中。無口なはずの篠田がいつになく楽しそうに笑いながら「先輩、おもいっす。」と膝を上下左右に揺らす。その振動で貴城と上原が跳ねながらも二人声をそろえて「トレーニングトレーニング」と囃したてる。目の前が赤く明滅した。


[ 8/9 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -