#8
西B棟の最上階。生徒会執務室は廊下を突き当たり更に大きな扉を一枚抜けた最奥にある。
その扉の前には派手な着物で武装した若様の侍従が数人、まるで石像のように立っており、チカとソウゴに気付くと、スクラムを組むかのように二人の入室を拒む。
「俺らは生徒会役員じゃ。お前らに邪魔立てされるいわれは無いはずじゃ。」
「そーそー。未処理の書類が山ほど残ってるんだよね。通してくんない?」
列の一番手前にいた男の肩をチカが掴む。男はそれを振り払い「お話中は通すなと。」とだけ口にし、後はまた石になった。
間違いない。中にいる。
次期とはいえ相手は「将軍」になる人間だ。こちらにその覚悟があれば別だけれど、無礼を働けば自分達だけの問題ではなく「家」の問題になる。けれど、青春真っ只中の男子高生にとっては、そんなもの紙切れ一枚の障害にさえ成り得なかった。
「・・・ぁ・・っ・・・く・・・」
漏れ聞こえたその声に、あからさまに侍従達は顔色を変え、きまずそうに視線を泳がせる。
そりゃそうだ。仕える次期将軍が扉の向こうで男に抱かれているのだから。
けれど彼ら以上に動揺したのは、チカとソウゴだった。
盲信していると言ってもいい相手を掻っ攫われた。よりにもよって「幕府」の人間に。
娼婦のように身体を使い、今この時、あの「次期将軍」が忠道を誑かしている。そう思うと目の前が真っ赤に焼けつく。
制止の手を振り払い、豪奢な装飾を施された執務室の扉を開き、その中へと身を躍らせる。若様とのソレを邪魔されればさすがの会長も良くは思わないだろう。けれど、あの笑顔が誰かに独占される、それが何よりも恐ろしかった。
「忠道君!」
やはりいつもの彼の特等席にはいない。舌を打ち、「王子」と称される彼らしからぬ荒い所作でチカは更に奥を目指し足を進めた。ソウゴもずくずくと痛む胸を抑えながら後に続く。
「仮眠室」というほどの施設ではないが、執務室の隣にはカーテンで仕切られたスペースがあり、簡易ベッドが設置されている。行事の前後には頻繁にお世話にならざるを得ないが、埃臭く寝心地が良いとは決して言えない安物のソファーベッド。
「あッっ・・・やっ!ぁっ・・・・」
甘ったるい嬌声。それさえも計算ずくの女のようで。
歯ぎしりを堪えることさえできずに、チカとソウゴはお互いの顔を見合わせ頷いた。
勢いよくカーテンレールの擦れる音とともに、視界が開ける。
そこに見慣れたソファーベッドはなかった。
どうやって持ちこんだのか、厚みのたっぷりあるマットレスに天蓋付きのベットフレーム。
外にいた派手な侍従達とは違い、まるで闇に紛れるかのような黒い着物で身を包んだ男達。
その数本の手が、褐色の身体を抑えつけていた。
饐えた匂い。それにまじる蜂蜜のような甘いにおい。
「ひぃん!や!・・・っヤあぅ!」
きしきしとベッドのきしむ音に混じり、じゅぶじゅぶと水気を含んだ音が耳を打つ。それなりに色事に慣れている二人だったが、目の前の光景があまりにも信じ難く息をするのも忘れただその場に立ち尽くした。
「あ!あ!ぅ・・・・・・っや」
その声は普段の彼からはかけ離れ、弱弱しくそれでいて今まで抱いたどんな女よりも婀娜やかに二人の耳を打った。
「あ〜?んだ?・・・」
「すいません。鍵を閉めていなかったようで・・・」
拘束する手をゆるめずに黒子と化した侍従が「征服者」に耳打ちする。
「あいつら、ほんとろくに仕事できないなあ。」
褐色の肌に朝露のような汗が滑る。まるで獣の雌のような格好とらされている自分の今の姿に歯の根が鳴る。どうにかしてその拘束から逃れようともがくも、自分と同じような体格の男達に四方から抑え込まれ敵うわけもない。
「・・・ほら、ご学友が来て下すったようですよ。」
まるで少女のような声で笑う。白く細い指が戯れに褐色のまろみの無い臀部をきつくつかむ。
「先ほど一緒にいらっしゃった方でしょ?」
「っ〜」
男は恐る恐ると言ったように顔を上げ、こちらと目があうと、その赤く染まった眦から涙をどっと溢れさせ、どうにかその視線から逃れようと頭を振る。
けれど、彼を捉える蜘蛛の糸は緩まない。親猫が子猫にそうするように首根っこを押さえつけられ、更に肩さえ動かないように押しかかられ、微動だにできなくなったところで後ろから征服者にガツガツと突きこまれる。
「ひぐ・・っ」
その衝撃に、思わず中に押し込まれていたソレを食い締めてしまう。
只でさえ、裂けそうなほどに広げられた肛口が更に広がるのを感じ、痛みと圧迫感に震えが止まらない。
「いてて・・・熱烈すぎるの嬉しいけど、ちょっとこれじゃ動けないな・・・おい・・・」
黒子から手渡されたソレを男がこれ見よがしに振って見せる。自分の体内に先ほども溢れるほどに含まされたローション。
毒毒しいピンク色のボトルから粘性の高い液体が繋がったままのそこにたっぷりと垂らされる。
その刺激さえも快感にすり替えるはしたなさを堪える間もなく、直腸内のすっかり腫れてしまった部分をグリグリと捏ねられ喉奥から切れ切れに嬌声が漏れる。羞恥に染まる背中にヌルリと舌が這い、ローションで滑った指先で男の急所を柔く包み込まれ腰骨に痺れが走った。
目の前には級友がいる。いつも自分を助け、共に喜びを分かち合った仲間が。なのに自分は一体どうしてこんなことになったのだ。顔など見れるわけもなく、シーツにつっぷし忠道は唇をきつく噛みしめた。
「もうやめてくれ・・・」
二人には聞こえないくらいの小さな声。
「やめてって・・・離してくれないのは・・・ほら、抜こうとしてるのにきゅうきゅう纏わりついて、僕をひきとめてくるくせに。」
「あ、あっ・・・や、もう動かさないで・・・もぉ・・・やだ」
「ん〜?抜かないで欲しいって?」
違う。首を振る。そうすれば目のふちにたまっていた涙がシーツに滴り落ちる。
忠道はこれ以上の快感がただただ恐ろしかった。
中に突きこまれている切っ先が「ソコ」を抉るたびに強烈な衝動が襲う。入口まで抜かれ、最奥まで貫かれるその繰り返しをなんとか終わりにして欲しくて、なおも動こうとする男を踏み止まらせるために身をよじる。
しかしその動きは、允只(みつただ)からも、そしてチカ、ソウゴから見ても、続きをねだる女のようにしか見えなかった。
允只が渇いた自分の口を舌で舐めながら、最奥を貫いていたモノを一気に引きずり出す。
「あぁあっ!」
褐色の逞しい背に飛び散る白く熱い飛沫。忠道は閉じきれない口からよだれを垂らし細い声を上げた。
あの顔で結構デカイブツ持ってるのがいて、それはそれで逆にエロイんだって!!
そう言った当の本人、ソウゴでさえ、目の前の若様、允只のソレに言葉を失った。
「っく・・・・」
「いやっ・・・やぁあぅ!!!」
子供のようにひくひくとしゃくりを上げる忠道の筋肉の奇麗に浮いた腰をあやす様に撫でながら、その双丘の割れ目に擦りつけるようにびちゃびちゃと叩きつけられるソレは、少女のように可憐なその容貌からは想像もできないほどに長大で凶悪なモノだった。
白濁を糸が引くほどに滴らせる赤黒い矛先はまるで別の生き物のようにびくびくんと脈打っている
「痛かった?」
黒子達はまるで允只の意思のままに動いているかのように、何も言わずとも、未だ弱弱しい抵抗を見せる忠道の身体をひっくり返す。
視線を合わされたその顔は、忠道にとって、四年前までは飽きるほどに慣れ親しんだ顔で。
「痛いわけないですよね?ココ、びしょびしょだもん。・・・でも、後ろだけでイクのはまだ難しいかな?」
「ひぃん!!・・うぅ・・っ・・・」
固く屹立し、ダラダラと先走りを漏らしているモノを容赦なく両手でしごかれ、呆気なく昇りつめてしまう。
白く明滅する視界、痙攣する身体。しかし允只は追いうちを掛けるように、未だ射精の止まらない鈴口を指の腹でなぶった。
「クゥウンぅ・・・」
喜色を隠そうともせず忠道の頬を濡らす涙をまるで甘露のように舐めとる允只。なんとか相手に抵抗の意思を示そうと腕を振り上げるものの、先ほどまでドロドロに解されていたそこに再び煮えたぎるモノを押しあてられると忠道の意識はあっけなく霧散してしまう。
「や・・やら・・もう・・・」
「ふふ・・・本当に愛らしい。僕らが飼っていた子犬のようですね。」
覚えてる?そう囁きながら、允只は忠道の頬に口づける。
それに合わせるようにぐっと押しつけられた亀頭をまるで歓迎するかのように食らいつく自分のそこに驚愕するも、既にコントロールできないところまで強制的に打ち上げられ放り出された体は、相手の細い腰に足をひしと絡ませ、先をねだるように腰を揺らしてしまう。
「うぅ・・あん!・・・ヒァ!!・・・あ!あ!」
覆いかぶさってくる相手の華奢な身体に両の腕をまわし、快感をどうにか逃そうと息を吐く。自分の息が熱い。あふれ出る涙が雫になって四方に飛び散った。腕の竜が允只の背中の上で這うように踊る。
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