◇ リヴァイと夕焼け 後編
「シルヴィアさん!好きです!」
「エレン、好きはこの国の挨拶ではないのだよ」
「知ってます好きです」
「語尾でもないのだよ」
「.......ん?それ、新しいタイですね。」
エレンが覗き込んだ彼女の胸元には深緑のタイが金の留め具で留められていた。
「よく分かったね。そうだよ。今朝下ろしたばかりだ。」
「勿論分かりますよ!シルヴィアさんが持っているタイは群青、アンバー、ワインレッド、オリーブグリーン、緑青、あとは全部黒ですからね。
ちなみに群青が一番お気に入りでしたよね。先週は3回もつけてました。あと黒もひとつずつ微妙に形が違って「やだこの子怖い」
「でもおかしいですね....シルヴィアさん、最近買い物になんか行きましたか?確かずっと公舎にいた筈....」
「ん?あぁこれはリヴァイがくれたんだ。私が買ったんじゃない。」
「.......え」
エレンの表情が固まった。不思議に思ってシルヴィアがその顔を覗き込むと、がばりと抱きつかれた。
「.....うん?」
ぎゅうと抱き締められて少し苦しい。よく分からないがその背中をよしよしと撫でてやった。
「オレ、もう少ししたらシルヴィアさんにプレゼントを贈れる位立派な兵士になりますから.....もう少し待ってて下さい....」
「プレゼントなんてしなくても大丈夫だよ」
「いいえ。オレの気が収まらないんです....だから、待ってて...くれますよね?」
「そう.....。うん....私が老衰で足腰が立たなくなる前に頼むよ?」
「....ひどいです。そんなに時間、かかりません。」
「冗談だよ。エレンはきっと立派な兵士になる」
「勿論です。」
そうして二人はお互いの腕の中で朗らかに笑い合った。
「......で、エレンはこの腕をいつ離してくれるんだい」
「このままオレの部屋まで行きましょうよ」
「えっ」
「いいじゃないですか。どうせシルヴィアさん、仕事しないんでしょ?」
「まぁ確かにそうだけど」
「じゃあ問題ないですよね?」
「うーむ...面倒な事になりそうなので失礼するよ」
シルヴィアはエレンの腕の中からするりと抜けて逃げ出す。
そして気付いた時にはその姿は遥か遠くに豆粒の様にしか見えなくなっていた。
「うっわー....流石....折り紙付きの逃げ足の早さ....」
彼女が逃げ去ったあとをぽかんと眺めながら呟く。
「....残念だなぁ。一緒に過ごせると思ったのに。」
綺麗で優しい彼女にもっと触れたい。
オレは難しい事はよく分からないから...とりあえず自分の気持ちに正直に生きていきたい。
色んな事が信じられない状況だけれど、貴方への気持ちは真実だと胸を張って言えるから....
*
「随分とエレンに懐かれているね」
「ん、ハンジか。.....まぁ一過性のものでしょう。すぐ飽きるよ」
「いやいや....意外とマイナスから始まった愛って激しさを増しちゃうものなのよ?」
「どうかねぇ....。」
シルヴィアが走って乱れたタイを少し整えると、留め具の金色が日の光を浴びてきらりと光り、その存在を主張していた。
ゆん様のリクエストより
エルヴィンのラッキースケベ+寝ている時にキスがしたいリヴァイで書かせて頂きました。
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