アニと鳥と好きな人 05 [ 161/167 ]
『アニを………見つけてやってくれないか。』
『俺たちを………俺を。………どうか、見つけてくれ。』
ライナーは…………エルダへと言った言葉を思い出して、ぼんやりと溜め息を吐いた。
傍にいたベルトルトがそれに対して「なに」と尋ねてくる。
「さっきから溜め息ばかり。………どうしたの、ライナー。」
「いや…………。」
ライナーは一度口を噤むが、なにかに思い当たったように再びそれを開く。
「ベルトルト。…………エルダをどう思う。」
「え?」
エルダの名前が出た途端にベルトルトはそわそわと挙動不審になる。
ぐるぐると思索するように腕を組むが、やがてなにかを思い出したのか赤面して両掌で顔を覆ってしまった。
「あ…………えーっと。そうだね、僕は」
「俺はな。」
しかしベルトルトの答えを待たずしてライナーは言った。
どうやらその質問は、ベルトルトと会話をしていると言うよりは独り言に近かったようだ。
言葉を遮られたベルトルトは些か残念そうな表情をする。
「俺は………。エルダという女は……ただ寂しくてどうしようもない人間なんだと思うんだよ………。」
一言ずつ、なにかを確かめるようにライナーは言葉を紡いでいく。
ぼんやりと、脳裏にその人物の柔らかな貌を描きながら。
「寂しくて悲しくて………だから、同じように寂しくて悲しい人間を放っておけない…………。」
脳裏の中で、彼女が微笑んだ。
その微笑みの底に流れている悲しみを、ライナーだけが知っていた。
「可哀想な女だと思うよ………。」
呟き、溜め息を吐く彼を、ベルトルトは無言で眺めていた。
そうして暫時した後………「そうかな」とぽつりと言う。
「エルダはただ、人が好きなだけだと思うよ。」
彼の言葉はいつものように小さかったが、妙な説得力を持っていた。
「それで、僕らのことが大好きなんだ………。」
そう呟いたベルトルトの表情は、なんとも言えずに幸せそうである。
つられて、ライナーもほんの少しだけ笑った。
「お前は………エルダのことが好きか。」
今更のことを、ライナーはベルトルトに聞いた。
「好きだよ。」
分かり切った回答が返って来る。ベルトルトは続けて、本当に微かな声で「大好き」と付け加えた。
「そうか。」
遠くを眺めながらライナーは応えた。
彼の脳裏のエルダは、やはり微笑みを絶やさずにいる。
「俺も、エルダが好きだよ………。」
ライナーは静かに、ただ一言だけ零した。
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