サシャとデートする01 [ 10/167 ]
「サシャ、泣かないで...」
「うん...けんど、次会えるんはあと一年も先やし...わ、私、寂しいて...」
「うん...寂しいね...。
でもサシャの事だから夕飯食べ終わる頃には、私の事なんてけろっと忘れてるでしょう。」
「ひどい!」
「冗談だよ」
「何故私のパンがないの...」
ちょっと水を取りに席を立って帰って来ると皿の上のパンがこつ然と消えていた。
「さあ?足でも生えて逃げたんじゃないですか?」
口の周りにパン屑をつけたサシャがあさっての方向を見ながら言う。
「十中八九貴女の胃袋の中へ逃げたんでしょう....」
「な、なんの事でしょう...」
なおもとぼけるサシャの頬をエルダがつまんだ。
「言えば分けてあげると言ったでしょう...!まったくほんっと貴女は昔から変わらないわね!」
「痛い!痛いですよエルダ!ごめんなさい!!」
その光景をユミルは呆れながら、クリスタは楽しそうに見ていた。
「エルダとサシャは幼馴染なんだよね?」
クリスタが尋ねる。
「いや、幼馴染というか、一年に一回私が父についてサシャの村に滞在してたのよ。
最初に会った時は、木の陰からこっちをじっと睨んで来るから何かと思ったのを覚えているわ。」
「あの時は年に一回しか会えなかったけど今は毎日会えるからとっても嬉しいです。」
サシャがはにかみながら言った。
「そう思うんなら人からパンを盗まないの」
「だからほっぺた引っ張らないで下さいよ!」
「保護者も大変だな...」
「誰が保護者ですか」
サシャの頬をつまみながらもエルダは嬉しそうにしている。
彼女もまた、サシャと毎日会える事を嬉しく思っているのだろう。
*
「サシャ、今日の午後空いてる?」
「?はい。訓練も午前中で終わりですもんね。」
「じゃあ一緒に街にでもお出かけしましょうか。」
「わ、いいですね。行きましょう!」
サシャは嬉しそうにエルダの手を握った。
「じゃあ昼食が終わったら着替えて宿舎の前に来てね。」
「了解です!」
ふざけて敬礼のポーズを取る。その後、くすくすと顔を見合わせて二人は笑い合った。
[
*prev] [
next#]
top