ベルトルトと結婚(仮)する 04 [ 86/167 ]
エルダのウェディングドレス姿は....想像以上だった。
「動いちゃ駄目なんて.....写真って大変ね、ベルトルト」
本当に、清らかで、綺麗で.....
「大丈夫、姿勢は辛くないかしら?」
何だか、知らない...エルダじゃない人みたいだった。
エルダが僕の腕にそっと手を添えてくる。初めて見る少し露出した胸元、丁寧に結われたマーガレットに、化粧した顔が、ひどく遠く見えた。
絵画とか、人形を見ている様な....そんな感じがして....
そう思って彼女を見下ろしていると、エルダは少し困った様に笑った。
「そんな顔しちゃ駄目よ。折角格好良いんだから笑わなくちゃ。」
「.....僕は元からこんな顔だよ」
「あらあら、そんな事ないわよ」
それに撮影なんだから前を見ないとね、とエルダが言う。
しかし尚も目を離さない僕に対して、彼女は不思議そうに首をひねった。
........これ、本当に知らない人なんじゃないのか......
だって僕が知っているエルダは....きちんと襟元まで閉まっているシャツを着て、髪は緩く結ってあって...顔つきだってもう少し大人しい。
この女性は....一体、誰.....
「なあに、そんなに見つめちゃって。また私の髪に葉っぱでもついているの?」
ふと、エルダはそう言いながら楽しそうに笑った。
.....その一言に情けない程ほっとする。
良かった....。信じられないけれど、この人は草原に仰向けになっていたあの女の子と同じなんだ.....、
「ほら、しゃんとして。ここまで来たらもう腹を括らなくっちゃ」
ね、とエルダはもう一度笑った。その笑顔に励まされる様にして僕も前を向く。
それと同時に、こんなに綺麗なエルダと今隣に並べている事がどうしようもなく嬉しくなった。
「今日の皆へのお土産は何にしようかしら。思いっきり美味しいものにして驚かしてあげたいから、撮影中、考えてみてね。」
「うん.....」
あ、やっぱりエルダだ。皆の事も、僕の事も大好きでいてくれて...それで僕が、大好きな....
「......やっぱりとっても似合ってるわ。今日、貴方にお願いして良かった。」
もう一度あの言葉をくれてから、エルダも前を向く。
......少し、視線をずらせば通った鼻筋に長い睫毛が見える。
柔和に微笑む表情は、先程息を切らせて控え室に入って来た姿とはほど遠い。
女の人って.....不思議だ。化粧や衣装を変えるだけで本当に違う人みたいになる。
.....でも.....お母さんみたいにほっとさせてくれるエルダも、僕の隣へ拳ひとつ分身を寄せてくれた葉っぱ付きのエルダも、今...ここにいるエルダも、どれもすごく綺麗だと思う。
それで、やっぱり大好きだった。
将来...この服をもう一度着たい。その時には、もう少し自分に自信を持てている筈だから....
そうしたら、今度は僕から君に...あの言葉をあげたい。
とっても似合ってる、綺麗だよ......って。
茶様のリクエストより
模擬結婚式ネタ(なぜかモデルをすることになった主人公とか)で書かせて頂きました。
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