骨の在処は海の底 | ナノ
 晩秋

「髪…。伸びたわね。」


 二人で寝ていた夜、いつものようにスネイプの身体を腕の中に収めていたヨゼファは彼の黒髪をやんわりと梳きながらそう零した。

 彼女の胸に頭を預けていたために、スネイプは皮膚から直にその声の振動を聞き取る。

 そうして…何も応えずにいたが、ヨゼファはゆっくりと同じ場所を撫でたり髪を指に絡ませたりを繰り返していた。


 少しばかり顔を上げると、視線が交わった。

 身体を起こし、視高を違えたまま二人はなんとはなしに互いを見つめる。

 やがてヨゼファが彼へと腕を伸ばし、首の後ろへと掌を回して再び近くへと戻していく。


 その冷たい指は、黒髪と対をなすように白いスネイプの首へと触れるらしい。そうして鎖骨、胸板へと。ヒヤリとした感触に、彼は肌が泡立つ感覚を覚えた。


 おいしそう


 微かな声で、ヨゼファが囁く。

 彼女はスネイプの首筋に顔を埋め、そこに口付けてから弱く甘噛みをした。


 しかしすぐに離れ、ヨゼファは目を細めてスネイプを見下ろした。頬を撫でてから、触れるだけのキスを落としてくる。

 いつでも、もどかしいほどに弱く優しく、丁寧な愛撫だった。


 もっと強く、


 スネイプもまた、先ほどの彼女と同様にほとんど吐息のような声で訴える。

 ヨゼファはまたゆったりと彼の黒髪を梳き、「傷がついちゃうわ…」と言っては首を横に振る。


 スネイプの皮膚に浮かび上がっていた鎖骨に口付けてから、ヨゼファは再び彼のことを胸に抱いてベッドに身を横たえた。

 彼女は頬を寄せ、そして合わせてはじっとその熱に感じ入るらしい。


「貴方は、本当に可愛いわね。」


 抱きしめてくる腕の力が、少しだけ強くなる。だが、少しだけだった。多くは求められず、彼女が主導のセックスは常にどこか理性の働きがあった。


「可愛い……」


 ヨゼファはもう一度繰り返してから、スネイプの髪を三度そっと撫でた。

 黙ったまま、彼はただそれを甘受する。幾許かの寂寞と、彼女の冷たい体温が齎す心地良さと共に。


 ツイッターの診断メーカー『大好きだから意地悪したい』様より

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