「コニー、この水なんか苦いよ....?」
ジョゼはコニーに汲んで来てもらった水を飲みながら顔をしかめた。
「え、何でだ?」
コニーは不思議そうに自分も持っていたグラスに口をつける....が、その瞬間それを放り出してむせた。
「こ、これ....水じゃねえ....!!」
ジョゼのグラスを急いで奪おうとするが時すでに遅し、見事に彼女の手元のものは空になっていた。
「誰だぁ!水差しに酒注いだ奴はあ!!!」
コニーの叫び声が、食堂中にこだました。
*
「......アルコール度数46度....」
アルミンが瓶のラベルを読みながら呟く。
「......ジョゼ....大丈夫なの....?これ、相当強いよ?」
心配そうなアルミンに対して、当のジョゼはけろりとしている。顔もいつも通り白いままだ。
「.....まぁ何事も無ければそれで良いんだけれど....」
しかし、彼女は何を思ったのか溜め息をつくアルミンの手をおもむろに握ってくる。
「........え?」
ジョゼはしげしげと自分の掌の中にある彼の白い手を眺めたあと、真っ直ぐにその青い瞳を見つめた。
「好き」
「........はい?」
「アルミンの事が好き」
「........はい!?」
その言葉にアルミンは白い顔を更に白くして最早紙の様な顔色になり、コニーはどうすれば良いか分からずにただ赤くなる顔を手で覆った。
そして四方からがたがたと立ち上がる音がする。
「これって告白....!?」
クリスタが少し興奮しながら尋ねる。
「根性無しかと思ってたらやるじゃん。大胆だねえアホ妹は」
ユミルが茶化す様にそれに便乗してきた。
「待って。待って。待って。待って。本当にジョゼはアルミンの事が好きなの?友人として?それとも男として?」
マルコが血相を変えて飛び込んで来た。
随分と遠くの席から全力疾走してきた為、肩で息をしている。
「どっちでしょう」
「.....そういうのはいいから」
「マルコの事も好きだよ」
「なっ.....」
「大好き」
「へっ.....」
マルコ、撃沈。
「....オレはそんなガリ勉野郎許さんぞ。」
「兄さん、焼きもち...?」
「違えよ!オレより先に恋人作るなんて許さねえってだけで....」
「嬉しい....」
「人の話を聞けっ...この....」
「兄さん、好きよ」
「うっ......」
「大好き」
「ぐっ......」
ジャン、撃沈。
「ジョゼ....私の事は....?」
「大好き」
「名前もつけて」
「ミカサの事が大好き」
「っく......」
ミカサ、撃沈。
「......私はパンが大好きです。」
「ややこしいからお前は黙ってろ、芋女。」
「アルミンとジョゼが結婚したら子供は肌真っ白だろうな」
エレンが楽しそうに会話に加わってくる。実に無邪気だ。
「気が早いよ!!大体僕らまだ付き合っても無いのに!」
アルミンが赤くなりながら反論する。
「.....ん?そうか...。ところで子供ってどうやって作るんだろうなあ」
「オレはキャベツ畑にある日落ちてるって聞いたけど....」
コニーが口を挟む。
「お前はどっちかって言うとジャガイモ畑で収穫されそうな頭してんな」
ユミルが背後でぼそりと呟いた。
「黙れよ...。そういうお前はごぼう畑がお似合いだよ、この根菜野郎」
「ジャガイモも根菜だ、この馬鹿野郎」
「.....子供、どうやってできるか...知りたい?」
ジョゼがそっとエレンの頬に触れながら言う。
「......え」
周囲が固唾を飲んだ。それだけ今のジョゼの仕草は色っぽかったのだ。
「......私も知らない」
耳元でそう囁いて軽くその頬にキスを落とす。これには流石のエレンも唖然としながら頬を染めた。
「ちょっとお水飲んでくるね....」
ジョゼは特に気にした様子もなく席から立ち上がって調理場に向う。その足取りだけはしっかりとしている。
.....しかし、
「あれ、完全に酔っているよな...しかもひでえ悪酔いだ....」
ユミルが呟いた。
「おい、アホ兄貴。いつまで死んでんだ」
そうして机に突っ伏しているジャンの頭をはたく。
「な...何だよ」
「責任取ってあいつをとっとと回収して来い。あんな痴女にうろうろされたら貞操の危機を感じる」
「ぶふっ流石のジョゼもお前だけは襲わぐふっ「いいから行け」
「........はい」
ユミルの右ストレートが綺麗に決まった頬を押さえながらジャンは席を立った。
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