「二人共抜け出しちゃって心配かけちゃってるかな.....」
ジョゼが少し不安げに呟いた。
「そもそも君が最初に抜け出したんじゃないか.....」
「だって兄さんがいなくなっちゃったから......」
「あぁ、そうやってジョゼはいつだって僕よりジャンを大事にするんだ....」
「そ、そんな事ないよ.....」
ジョゼが焦ってマルコを見上げる。
彼女にとって、兄のジャンも夫となったマルコも掛け替えの無い大切な存在で、優劣など付ける事はできなかったのだ。
「ふっ」
しばらく真剣にこちらを見てくるジョゼを見つめた後、マルコは軽く吹き出した。
「マルコ......?」
ジョゼが訝しげに尋ねる。.....何故自分は今笑われたのだろう.....。
「いや、僕って愛されてるなぁ.....と思って」
マルコはゆっくりとジョゼの両手をとって彼女に向き直った。
互いの瞳の中に互いの姿が映り込む。
「冗談だよ.....僕は兄さんのジャンを大切にするジョゼの事を好きになったんだから......」
でもあんまりに仲が良過ぎるから少し妬けちゃったんだよ、と柔らかく笑いながらマルコは言う。
ジョゼは彼のこの優しい笑顔を見ると胸がぎゅうと締め付けられてたまらなくなるのだ。
「マルコ......私は君を絶対に幸せにするね.....!」
ジョゼはしっかりとマルコの手を握り返しながら言った。
マルコは驚いた様に目を見張ったあと、少し困った様に笑った。
「.....それは僕の台詞なんだけどね.....それに僕はこうして君の隣にいるだけで最高に幸せだよ....」
マルコは片方の手で優しくジョゼの頬を撫でた。ジョゼはくすぐったさに目を細める。
「私もだよ......マルコ.....私の事を好きになってくれて本当にありがとう......」
「どういたしまして」
マルコはそのままゆっくりとジョゼの頬に唇を落とした。
「へ」
ジョゼは突然の事に固まってしまう。
「さ、式場に戻ろう」
マルコは相変わらず笑顔でジョゼの手を引いて歩き出す。
「マルコ.....君って人は......っ!」
微かに耳を赤くさせたジョゼがそれに続く。
「君だってやってたじゃないか」
「私と兄さんは.....兄妹だから....構わないんだよ....っ」
「ほらまたそうやって....」
「だ、だからそんな事は無いと言っているでしょう......!」
結婚式はまだまだ続く。
二人の幸せもまだまだ続く。
残酷な世界、狭い壁内の中にもこうして愛の花は美しく育って行く.....
愛実様のリクエストより。
マルコで結婚式を書かせて頂きました。
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