いつか見る空 | ナノ
あぁ、まただ....



「エレンの目は綺麗だね....私はとても好きだな」

ジョゼはほうと息を吐いてエレンの瞳を眺めていた。

「やめろよ、照れるからあんま見つめんなって」

エレンは口ではそう言うが満更でも無さそうだ。

「そう、ごめんね....でも本当に素敵だったから....」

「ジョゼ、私の目は」

ミカサがずいとジョゼに近寄る。明らかに何かを期待している声色だ。


ジョゼは少し考える様な仕草をしながらその瞳を覗き込む。
あまりにもじっと見つめるのでミカサは少し照れた様に頬を染めた。

「そうだね....。ミカサの目も大好きだよ...。真っ黒で意思が強そうで.....
でもミカサの魅力はやっぱり綺麗なその髪の毛じゃないかな.....兄さんもとても好きだと言っていた....」


「ぶっふぉ!!」

後ろでコニーと話していたジャンが吹き出した。

.....何気にミカサとジョゼの会話に聞き耳を立ててたのか....そしてコニーが唾液まみれだ.....可哀想に....

「ジャンの事はどうでも良い。貴方はどう思うの」

あー、ジャン....ショック受けてるなー....後で励ますのが面倒臭そうだ.....


「うん.....私もとても素敵だと思う.....。私は猫っ毛だから艶やかで芯が強い君の髪がうらやま」

そこで言葉が途切れた。ミカサがいつもの如く凄まじい力でジョゼに抱きついたので、それ以上の発言は叶わなかったのである。

毎度思う事だが、ミカサの強靭な体に抱きつかれて良くジョゼは平気でいられるものだ。

苦しいのかもしれないが、その顔は相変わらず無表情で心の内は分かりにくい。


「私もジョゼの柔らかい髪の毛が大好き...ううん、ジョゼだったら何でも好きなの.....」

......凄いな....これでもしミカサが男だったらと思うと気持ちは穏やかでない....


「じゃあアルミンはどうなんだ?」

エレンが抱きつかれてもみくちゃになっているジョゼに話しかける。


「え」

まさか自分に話を振られると思っていなかったアルミンは相当驚いている様だった。

ジョゼはミカサの胸の内からアルミンをまじまじと見つめる。



「......アルミンの目は....空みたい.....」

一言そう呟いてジョゼは微かに笑った。


「....あ、ありがとう....」

アルミンはひと呼吸置いた後、白い頬をやや朱に染めてそう言った。

ジョゼの発言とその仕草に彼の胸がときめいてしまった事は端から見ていても充分理解できる。


.....そうなのだ....彼女は人から与えられる好意に鈍感な分、自分から好きを伝える事に躊躇しない。

このまま行くと.....誰かに何がしかの誤解を与えてしまうのでは無いか.....。







「.....と、言う訳だけど.....。分かった?ジョゼ....」

「う、うん?.......分かった。」

......その返答に反して目の前の女性の頭上には未だに疑問符がふわふわ浮かんでいる。

あまり誤解を与える様な話し方はやめろと軽く説教をしていたのだが、これは確実に理解できていない。


「例えばだよ、僕が君に毎日好き好き言っていたらどう思う?」
ここはやや照れくさいがたとえ話で行こう。

「.....ちょっと恥ずかしいね.....」

「そうだろう?だから「でも嬉しいな」

彼女は少しはにかみながら答える。.....駄目だこれ

「.....世の中の男性は君にとっての僕やジャンみたいな人間ばかりじゃないんだよ....」

「うん?分かってるよ」

.....いや、君は分かっていない.....


「だから、もし要らぬ誤解を与えてしまった場合「あれ、マルコ」

彼女が急に僕の言葉を遮って発言した。
そうしてじっと僕の顔を見つめて来るので、照れくささに思わず目を逸らしてしまった。

「あぁ、分かった....。私がマルコの事が好きな理由...。」

「へ....?」

「やっぱり君はとても優しくて温かい瞳をしてる....。その目で見てもらうととっても安心するんだ....。」

そう言ってジョゼは再び柔らかく笑う。


その笑顔は....何と言うか....僕の心臓をいつも鋭く鷲掴むのだ....

先ほどのアルミンの気持ちが痛い程分かる.....もう何も言えなくなってしまった。


「あ、ありがとう......」

ようやく声を絞り出して一言礼を述べる。彼女はそんな僕を相変わらず淡く微笑みながら見つめた。

顔にじわじわと熱が集まって行くのが分かる。恐らく今自分は情けなく赤面しているに違いない。


「.....マルコ....?どうしたの」

「何でもないよ...でも....強いて言えば君の所為.....」

「え」

「あーもういいよ....格好悪いったら有りゃしない....」

「そんな事ない、マルコは格好良いよ....」

「はー、勘弁してくれ....」

「マ、マルコ?大丈夫かい....?」

「.....もう駄目....」

「マルコ!?」



その日の晩、男子寮の鏡でしげしげと自分の瞳を観察するアルミンの姿が何名かの訓練兵に確認されたとかされなかったとか。



蜜柑様のリクエストより。
104期と話している時に、傍から聞くと口説いてる様な話し方をするのを注意するものの結局は赤くなるマルコで書かせて頂きました。


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