「ジョゼ、ここに座ると良い。」
夕食時、ミカサが自分の隣の席をジョゼに促した。
「ありがとうミカサ、でも兄さんの隣にもう席を「ここに座ると良い。」
「....はい」
諦めた様にジョゼはミカサの隣、そしてオレの正面に着席した。
ジャンの方を見ると、めっちゃこっちを睨んでいた。
(ミカサを妹に取られて悔しいのか、妹をオレ達に取られて悔しいのか、その辺は判別できなかった。)
....なんだよ、別にオレは悪くねーぞ。
ジョゼ・キルシュタインは憎きジャン・キルシュタインの妹である。
しかし内面は兄とは真逆で、穏やかで優しい性格だ。
唯一の難点は人を殺せそうな程鋭い目付きを有している事か。
しかしそれも慣れてしまえばどうということはない。
オレはジョゼの凛々しい顔つきがけっこう好きなのだ。
「ジョゼ、食事を取ってきた。」
「わざわざ取ってきてくれたの....?....ありがとう....」
ジョゼが驚いた様に言う。
「気にしなくて良い」
そう言ってミカサは淡く微笑んだ。
ジョゼと一緒にいる時、ミカサはすごく優しい表情をする。
長い間共に時間を過ごしたオレでもあまり見た事の無い顔だ。
ミカサがオレに向ける表情は、恐らく『母親』に近いものだろう。
対してジョゼへの表情は......
(そうか、『女の子』の顔してる....)
ミカサには年の近い同性の友人がいなかった。ジョゼが初めての女の子の友達と言っていいだろう。
彼女はジョゼの事をとても信頼していて、安心を感じているのだ。
(なんだか....女の友情も良いもんだな....)
男の友情が竹を割った様な爽やかなものであるなら、女の友情はしっとりと柔らかであたたかいものなのだろう。
ミカサのその表情を見ていると、オレも安心を感じる。
そしてその表情を引き出してくれたジョゼと一緒にいても安らかな気持ちになれる。
残酷な世界にオレ達はいるけれど、どうかできるだけ長い間この二人の友情が続いて欲しいと願った。
「ジョゼ、パン屑が口に....」
「ミカサ、何故それを口に入れたの....」
「?入れてはいけないの」
「....いや、いいけれど」
ちょこ様のリクエストより。
エレン視点で世話を焼くミカサ、という事で書かせて頂きました。
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