(訓練兵になる少し前。)
泣かないこと、兄さんに頼らないと。
それが私が立てた誓いだった。
....しかし、怖い夢を見て起きてしまったこんな夜はどうしても兄さんに甘えてしまいたくなる。
(...とりあえず兄さんのベットの前に来てしまったが...どうしよう...)
そこにはジョゼの気持ち等おかまいなしにいびきをかくジャンの姿があった。
(起こしたら...迷惑だよね...)
(やっぱり自分の部屋に帰ろう...)
「おい。」
しかし、ドアへ向かおうとした瞬間に背後から声をかけられた。
「兄さん...起こしてしまった...?」
「当たり前だ。真夜中にお前の凶悪な顔が枕元にあったら嫌でも目が覚める。」
「ごめん...もう部屋に帰るから...」
「待てよ。何か用があったんだろ」
「いや...それは...なんでもないよ...」
ジャンは煮え切らないジョゼの態度に溜め息をひとつつくと、その腕を自分の方へ引っ張った。
「うわ」
あっという間にジョゼの体はジャンの横に収まってしまう。
「めんどくせーな。寝ろ。」
ジョゼを抱き込むと再びジャンはいびきをかき始めてしまった。
(あぁ...情けない...。)
誓いとはなんだったのか。
悲しくなってジャンの胸に顔を埋める。
(兄さんの力になれる位強くなりたいのに...)
涙が目の端にじんわり浮かんだ。
(いつか、必ず兄さんの役に立つ様になるから...)
もう少し、この温もりの中にいさせて下さい。
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