ふ、とマルコが目を覚ますと…隣に座っていたジョゼは相変わらず窓の外を見ていた。
「…起きてたのか」
僅かに掠れた声で尋ねれば、彼女はゆっくりマルコの方を向く。
うっすらと夜が明けているらしく薄暗い部屋の中でその輪郭は白く滲んでいた。
「つい、さっきね。」
そう答えてジョゼは水差しからコップへと水を汲み、差し出してくる。
受け取って中身を一口に飲み干してサイドテーブルに置き……マルコは彼女に倣って、目を細めてようように光っていく窓の外を眺めた。
「初日の出か……」
しみじみと呟くと、「初日の出だよ」と同じ言葉を繰り返される。
黙って眺め続けていれば、しらじらとした霧の向こうからこちらの山の端へ渡る鶫の群れが、ふわりと羽ばたきをしてかすみに掛かった。
「ねえジョゼ。」
囁くように隣の人物に声をかけた。なに、と返される。
「………キスしようか」
唐突なマルコの言葉にジョゼの身体がかちんと固まった。
…………少し経った後、「え、あれ…えっと、なんで?」と非常に困惑しつつ尋ねられる。
「僕とジョゼがさ…恋人同士になって初めて迎える新年じゃないか。」
ジョゼが慌てれば慌てるほどにマルコの気持ちは穏やかだった。
未だに視線は窓の外に向けたまま、会話を重ねる。
「いや…うん、そうだけど。ちょっと急過ぎないかなあ……」
ジョゼは落ち着けずに自身の髪を撫でたり頬に手を当てたり一気に挙動不審になる。
几帳面に窓ガラスに嵌められた木枠の裾からは光が少しずつ差し込んでいた。
それに合わせて彼女の頬から始まった滲む朱色は耳へ、首へと伝わっていくらしい。
ようやくジョゼの方を見たマルコはその光景を見て思わず笑ってしまった。
「じゃあいつなら…急じゃない?」
見られていることに気が付いて恥ずかしさの臨界点に達している彼女は、遂に顔を片手で覆ってマルコから隠れるようにする。
追い打ちをかけて尋ねれば沈黙。マルコはいよいよおかしくなって吹き出す。
「ほら、おいで。」
情けなく赤面した顔面を隠しているジョゼの手を取って、その身体を近くまで導いた。
………非常に恥ずかしそうではあるがやはりされるがままになっている。嫌では無いのだろう。
「今年もよろしくね」
「うん……。よろしく。」
空は…紅と藍色との交ざったものを基調にして瑠璃にも行けば橙にも薄紫にも染まっていく。
そして極の白が段々と広がり、病室に昨晩生けられた花の顔が仄かに光って見えていた。
やっぱり綺麗な花だなあとマルコはしみじみと感じる。
そして静かな喜びの中、ゆっくりとジョゼの身体を左腕で抱いた。
理莉様のリクエストより
クリスマスパーティーとありましたが時期的に間に合わず…汗 新年会で書かせて頂きました。
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