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エレンを助ける 後編


翌朝、オレは教官の前で再び地面に頭を打ち付けた。

何故だ.....ジョゼに借りた本も読んだ....ライナーやベルトルトにも励ましてもらったのに....!!


「ま....まだ....!」

足をバタバタと動かしどうにか体勢を立て直そうとするも、教官の声にそれは阻まれた。

「降ろせ。」

「ま まだ!!オレは!!」

「早く降ろせ。」


凄まじいショックで頭がフラフラする。
教官が何か喋っている....。ベルトの装備をワグナーと交換しろ?何言ってんだこいつ......。







装備を変えてもう一度試してみると、危なっかしくはあるがバランスを取る事ができた。

な....何で!?できたぞ...急に...。


「これは...一体...。」

「装備の欠陥だ。」

未だに状況が飲み込めないオレに教官が説明する。

「貴様が使用していたベルトの金具が破損していた。
今朝ジョゼ・キルシュタインに確認してみる様に頼まれたのだ。
正常なら腰まで浮いた状態から反転しても地面に頭をぶつけられる訳ない。」

「え?」

思わず様子を見守っていた連中に紛れているジョゼに視線を向けた。
相変わらずの仏頂面である。


「ここが破損するなど聞いたことはないが、新たに整備項目に加える必要がある。」

「で では....適正判断は...」

「......問題ない...修練に励め。」


...やった!やったぞ!体中が歓喜で溢れる。


ジョゼをもう一度見ると視線に気付いたのか親指を軽く立てて返してくれた。
あまり表情の変化はないがどうやら笑っているらしい。

笑った顔は意外と綺麗で、できる事ならもっと色々な表情を見てみたくなった。
そんな怖い顔をやめてもっと笑えばいいのに。







「おい、何で教官に助言したんだ。」

夕食のパンをむしりながらジャンはジョゼに聞いた。

さっきからパンをむしってはスープに投げ入れるので水分を吸ったパンが皿にこんもりとしている。


「何でって...原因があるなら取り除くべきだし放ってはおけないでしょう。」

ジョゼは哀れな事になっているパンを眺めた。まずそうだ。


「お前ミカサだけじゃなく死に急ぎ野郎とまで仲良いのかよ...昨日も何か貸してたしよ。」

今夜のジャンはご機嫌斜めらしい。どうやらジョゼがお世辞にもジャンと仲良しと言えないエレンの手助けをした事が気に障った様だ。


このままではジャンのパンは全てスープの海の藻屑となってしまう。
これ以上犠牲となるパンを出さない為に妹として兄の面子を立てなくては。


「大丈夫だよ。エレンが訓練兵に残っても兄さんなら実力でより優秀な成績を収められるよ。」

「....本当にそう思うか?」

「もちろん。自慢の兄さんだもの。」

「.....。」


何故かジョゼの手の中にあったパンがジャンにひったくられた。


「何するんだ兄さん。」

取り返そうと手を伸ばすがすでに半分近くがジャンの口の中だ。

「お前にはこれをやる。」
ジョゼの眼前に突き出されたのは例のパンの残骸たちだった。何とも理不尽である。

「兄さん...食べるのが嫌なら最初からやらなきゃいいじゃない....。」

「うるせーよ。とっとと食え。」

そう言うジャンの耳は少し赤かった。


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