いいニーハイの日
(トリップヒロイン設定)
大阪城のとある廊下で、2人の男と1人の女が日向ぼっこをしていた。すると急に女が何かを思い出したのか、手をぽん、と、叩き立ちあがる
「そういえば!今日はいいニーハイの日です!」
「にーはいとは何だ」
「えっと、確かニーハイソックスの略です」
「すまない鎌子、ワシ等は南蛮語が理解できないんだ」
困ったように微笑む家康と三成に向けて鎌子はどこから出したのか、じゃーん!という効果音と共に2本の布を差し出す。所謂、ニーハイを
それを見た家康と三成は怪訝そうな顔をし、ニーハイを手に取ってまじまじと見たり弄ったりする。戦国時代の今だからこそ許されるが、鎌子の居た平成の時代でこんなことをしていたら間違いなく2人は変態のレッテルを貼られているだろう
「それがニーハイというものです!」
「へえ、これがにーはいか!なんだか不思議な布だなー、伸び縮みするぞ!」
「これは何に使うんだ?見たところ、履きもののように見えるが」
「ザッツラーイト!その通りです三成さん!これは履くものなんです、さあ三成さん是非履いてください!」
「は?」
「きっと似合うと思うんです!ああ、袴は脱いでくださいね素敵なおみ足と絶対領域が見えないんで!」
「失せろ変態、死ね」
べちん!と、鎌子の顔に素晴らしい早さでニーハイを叩きつける三成。布なのに有り得ない威力で顔を叩かれた鎌子は思わず涙目になり三成を睨みつけるが、当の本人は素知らぬ顔でお茶を飲んでいた。ぐぎぎ…と女と思えぬ顔で歯を食いしばる鎌子の頭を宥めるように家康が撫でる、これが3人のいつもの光景。今日も実に平和である。
「三成さん自分の足に自信ないんだー、ふーん、そうなんだー」
「私は自己愛の精神など持ち合わせていない」
「でも、三成って確かに足綺麗だよなあ。細いし白いし」
「家康…貴様も変態だったとは知らなかった。鎌子と共にどこかへ消えろ気色悪い変態共め」
「家康さんに見せたことあるなら私にも見せてくださいよ!馬鹿!」
「前に偶然風呂場で居合わせただけだ」
「何それ羨ましい…私も2人の美しい裸体を拝みたいです」
「貴様がこれほどにまで馬鹿でどうしようもない変態だったとは…秀吉様、斬滅する許可を…!」
「こらこら落ち着け三成!」
刀を抜こうとする三成の腕を必死に抑える家康。このままではいけないな、と思い話題を変えようとする
「そのにーはいとやらは履くとどのような姿になるのだ?」
「三成さんが履いて見せてくれたら1番わかりやすいんですけどね」
「貴様のその醜い足を切り落としてやろうか」
「うるせーこのもやしっ子!…うーんと、こんな感じですかね?」
ひょい、と、庭に出て適当な枝を拾って地面にがりがりと絵が描く鎌子。しばらくするとそこには着流しの丈を膝上15センチくらいにしてニーハイを履いている三成が誕生した。が、その瞬間本物の三成がその美しい足で勢いよく地面の絵を消した
「ぎゃー!何するんですか三成さん!せっかくうまく描けたのにー!」
「貴様こそ何を描いているんだああああああ!!!!!人で勝手に遊ぶな!!!!」
「いや、でも似合っていたぞ三成!」
「いいぃぃええぇぇぇやぁすぅううぅうぅうう!!!!!!殺してやるぞおおぉぉおおおお!!!」
三成が刀を抜き、家康に向けて振り切るが得意の運動神経を活かして難なく回避し、いつものように笑顔で走り逃げる家康。と、いつものようにもの凄い形相で追いかけて行く三成。その2人をいってらっしゃーいと見送ってから鎌子は再び庭にしゃがみ込みがりがりと絵を描いていく。
三成さんはニーハイ似合うと思うんだけど、家康さんってどうなんだろう…?ふと思い、先ほど消されたニーハイ三成の横にニーハイ家康を描いていく
「………これは、なんというか…」
鎌子の手によって、ニーハイ姿の家康が地面に完成した。三成の時と違い、着流し姿ではなく黄色いフードのついたパーカー(真ん中に歪な家紋付き)に、ミニスカートを履いてニーハイ姿な家康。服装だけなら可愛らしいのだが、家康の無駄に逞しくついている筋肉がなんとも言えない雰囲気を作り上げていた
自分で描いておきながら何とも言えない不気味なものを作り出してしまったことに頭を抱えてしゃがんでいた鎌子の耳に2人分の足音が聞こえてきた
「家康ぅぅぅぅうう!!!大人しく私に斬滅されろおおぉおぉおおぉお!!!」
「はははっ!それは御免だな三成!!!…ん?鎌子どうしたんだ?」
「あー、家康さん…何かごめん。すまんかった…」
「ん?何がだ?」
地面にしゃがみ込んで頭を抱えている鎌子が気になったのか、2人共傍に寄る。すると中途半端に消されたままのニーハイ三成と、その横にいるニーハイ家康が視界に入った
無駄に笑顔で、無駄に筋肉質で「絆!」と言っているニーハイ姿の家康
「…鎌子、これは…えっと、ワシか…?」
「出来ごころでつい描いちゃったんだ、そしたらなんとも言えない感じに…」
「……」
「三成さんが更に顔色悪くして絶句してるううぅうう!!」
「いや、これはちょっと気持ち悪いと思うぞ…。ワシだけど」
「別に家康さんが格好悪いとかじゃないですからね!ただちょっと素晴らしい筋肉がニーハイと合わなかっただけで!家康さんは各校良いですからね!素敵ですからね!」
「そ、そうか…照れるな、ありがとう」
「いいからその気持ち悪いものを消せ」
ほんの少しの罪悪感と共に足でニーハイ家康を消す鎌子。筋肉質の人はニーハイ似合わないんだな、とどうでもいい知識を覚えながら。
そこでふとこの城にいるとある方を思い出した、そう、城の主でもある、あの方を
「筋肉質の人が似合わないってことは、秀吉さんは家康さん以上に似合わないんでしょうね…」
「貴様!秀吉様を愚弄するのか!!!」
「いやちょっと落ち着けって三成さん、冷静に考えてくださいよ。秀吉さんが、これを、履いている、姿を!」
今にも恐惶モードになりそうな(もうすでに黒いオーラは放っているが)三成の目の前にニーハイを見せつける
「秀吉様に不可能は無い!」
「着流しの丈を短くしてこれ履いてちょっと肌蹴けてる秀吉さんを想像してみてくださいよ三成さん!ちょっと赤面してると尚良し!いや良くないけど」
「秀吉様が…」
「赤面して、これを…」
想像しているのか、黙り込む2人。家康に至っては青ざめて頭を抱えてしまった、それほどにまで強烈なものを想像してしまったのだろう。そして三成はと言うと、
「ぅ、うわあああああ秀吉様ああああ!!!申し訳御座いません!!!!!!」
主君への忠義と、想像して己の頭の中に出来上がったものの恐怖とで何かが爆発してしまったのか叫びながらどこかへと走り去ってしまった。
残ったのは、ニーハイを手にした鎌子と青ざめた表情をしたままの家康。2人は三成が走って行った方向を見た後にお互い視線を合わすと無言のまま頷いた
「鎌子、もうにーはいの話はやめよう。それはとても恐ろしい武器だ」
「そうだね、もう今後一切するのやめよう。でも、三成さんはニーハイきっと似合うと…」
「鎌子、もういい、もういいんだ…終わりにしよう」
その日の夜、どうしてもニーハイ姿の三成が見たくて仕方なかった鎌子が三成の部屋に忍び込むと膝を抱えて「秀吉様がにーはい…秀吉様に不可能は…、いやしかし…、にーはい……」とぶつぶつ言いながら泣いている三成がいたとか。
――キリトリ――
11月28日はいいニーハイの日らしいので。