くしゃみが出た。出た、と思ったらまた出た、そのあともっかい出た。計何回だ?とぼんやり思っていたら隣にいたニトロが吹き出した。聞いてんじゃねーよと思いつつ鼻っつらを叩いてやるとふぐふぐ言いながら顔を振る。ざまみろコノヤロ。


「なにしやがる」
「人のくしゃみを笑うでない」
「あまりに見事な連発ぶりだったからよ…体調悪いのか」
「良くはない。風邪かな」
「お前がか。信じらんねえなあ」
「なんで」
「知ってるか、バカは風邪ひかねえんだと」
「ニトロにだけは言われたくないし」
「てめえ」


ぐるる、と馬のくせに狂犬のような喉の鳴らし方に一歩退く。季節はもう冬なのだ、それなりに体調も崩し易い。またくしゃみをすると隣で笑っていたニトロの顔も歪んだ。お前もくしゃみするんかい。


「ぶぇっしょ」
「バ、バカ、なにそのくしゃみ!バカみたい!」
「蹴り飛ばしてやらあ」
「いやーっ死んじゃう!」


命懸けの追いかけっこはアンカルジアに目撃されていたようで、散々走り倒したあと厩舎に戻ったら呆れられた。

「二人ともバカよ」

ごもっともで。