誰にも知られずひっそりと、淋しさを縫い合わせていたんだ。



高い湿度をそのままに、じとりと粘ついた空調の部屋には大きなソファー。窓から見える曇天に息を詰まらせる。カルロはソファーに前のめりに腰を据えて私を刺す様に見ている。その手にある鈍い発光は。


「あんまりくだらねぇこと言ってんじゃねーよ」
「…何がくだらないのさ、私は、」
「おれがいつ頼んだ?」


何がそんなに気に障ったのか見当がつかない。たまたま機嫌が悪かったのか。だっていつもと変わらない、そう、いつも通りの会話の延長線の…





『ずっと一緒にいるね』
『…必要ねぇだろ、今更』
『必要ないの?誰もいらないの?』
『元から一人だ。ずっと変わらねぇよ』
『寂しいでしょ、それって』




「ふざけるなよ」


相棒のナイフをバチン、バチンと開閉させている。人は光り物がちらつくと判断力が鈍るという。カルロがそれを狙っているかどうかは知らない。空気を裂く小さな音。バチン。


「別に、こっちの勝手じゃん…」
「言っとくがお前みたいなのが一番嫌いなんだよ、おれは」
「…私は好きだもん」


バチン。


「刺すぜ」
「やってみろ」
「…そうかよ」


頑として物怖じしない私の態度に興を削がれたのか刃はしまわれた。怖くないわけがない、冷や汗ならとっくにかいている。刺すと言ったら本当に刺す男だ。面倒になったのかナイフを放り投げてため息を吐いて背もたれに倒れた。そんな仕種でさえ胸がちりちり焼けるように反応してしまう。



「勝手にしやがれ」
「する。じゃあこれからの私の言動全てに関与してこないでね」
「ちっ」


舌打ちなんか聞こえない振りしてするりと腕をカルロの首の後ろへ回してその肩に額を預けた。私の背に腕は返ってこない。期待なんかしてないから別にいい。無理矢理引きはがされないだけマシだ。
ふっ、とすぐ真横で空気が震えた。残念、カルロの笑い顔なんてそう拝めないのに。


「本当馬鹿な奴」
「結構ですよ」
「……………」
「……………」
「…なんか言えば」
「てぃあもー」
「うっざ」






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