来日してから、毎日のようにコンビニエンスストアに通っている。
特に買うものが無くても、なんとなく立ち寄ってしまう。
もはや癖だ。
アメリカのコンビニと、同じ看板を見つけたときは驚いた。
コンビニは日本発祥の文化らしい。
ミニ四駆もそうだけど、すげえよな、ジャパン。
店特有のお手軽さ、自分の気質によく合ってると思う。


春の陽射しが強く降り注ぐ。
その日は冬の気配を抹殺するかのように、ひどく暑かった。

今日も今日とてコンビニへ。

ガラスケースの冷蔵庫で、清涼飲料水を物色する。
まだ日本にきて1ヶ月しか経っていないが、新商品まで俺は把握済みだった。
炭酸入りのペットボトルを一本引き出す。





「わあ、外人さんだぁ」



ここは日本で、自分は生粋のアメリカ人だ。
外人に向かって外人とは、不躾ではないか。
日本人は慎みを重んじる民族である。
ヤマトナデシコ。
よく意味はわからないが、異国情緒の漂う魅惑的なことばだ。


「それって俺のこと?」


「わー!なんかこっち来た!」



馬鹿は好きだ。おもしろいから。



だから、声の主を見てやりたかった。
人のよさそうな笑顔を張りつけ、振り返る。


間抜けな顔をした日本人。
小動物を匂わせる愛らしさ。





「コーラ飲む?」


「んん?」


「キミかわいいねー」


「う?あっ、チョコたべる?」


「食うー」






コンビニでは運命の出会いも可能らしい。
春は、最高に馬鹿馬鹿しい季節だ。



(090413/レフト)