ブレットはいつまで経ってもコンビニおにぎりを上手に開けることができなかった。日本食代表のレギュラーメンバーに位置するおにぎりが彼の口に合ったのは幸いだがいざ食べようというときに形状を留めていないのは些か悲惨だ。今も格闘したためにもうぼろっぼろ。指にくっついたご飯粒をしゃぶりながらブレットは残りの二つを無言でこちらに寄越してくる(育ち盛りだから最低3個は食べないと足りないのだ)パッケージにはツナ、おかかと表記されていた。ちなみに彼の目前で中味をあらわに曝している具はピンク色。鮭だな。好みの具が魚ばかりというのも意外だった、偏見だけど。
意に倣って開けてやる。手順の矢印1を引っ張り続いて2、3も引っ張る、それだけの行為がそんなに難しいだろうか。依然ブレットは無言。可哀相なので私のスープパスタ用にもらったスプーンを貸してあげた。



「日本のライスには感動した。ぐにぐにしててうまい」
「そりゃよかった」


綺麗に開封された残りのおにぎり、シャッフルして彼の前に並べたら小さく笑われた。


「案外不器用なんだねブレットくん」
「お前がいなきゃ何もできないさ」
「まさかおにぎり絡みで口説かれるとは…」


グラサン付けた外人少年が黙々とコンビニおにぎりを食べている。私もおにぎりにすればよかった。スープパスタ食おうにもスプーン使われちゃったしなぁ。ていうかブレットはあっという間に3個めに突入していた。ラストはツナだ、とかじった後で中味を見せつけてくる。せんでいい。


「食べんの早っ」
「うまいからな」
「本当好きだね」
「名前が握ったやつを食べてみたい」
「いいよ。簡単だし。中味は?」
「愛で」
「爆笑なんですけど」





0415/ライト