辛気くさい顔で寝っ転がられたらお気に入りの香をどんなに焚いても台なしね。何か言って欲しそうなあんたを視界に入れないよう指先に神経を集中させる。禿げたネイルは可愛くない、でも塗り直すなら一からが良い。ゆっくり息を吹き掛けておしまい。ハクの強い薔薇色、あんたからの贈り物よ、これ。


「……ジュリオー」
「なによ」
「冷たい…」
「どう熱くなれっていうの?欝陶しいだけのあんたに対して。……どうせまた駄目になったんでしょ」
「さっすがー」



泣き腫らした眼でいきなり部屋になだれ込まれたら大概察しも付くわ。あんたいっつもそうじゃない。くだらない恋愛もどきに躍らされて傷付いて。どうせ早々忘れてまたすぐに浮かれるんでしょ。そんなの一々慰めるだけ馬鹿馬鹿しいったら。


「なんで長続きしないのかな…」


許可なく抱きかかえた柔らかいクッションに頬を押し付けて眉間に皴を刻む。やーね、不細工。からかいながら腕を伸ばして真っ直ぐな髪に指を通す。アタシはくせっ毛だから少し羨ましい。この子はアタシに無いもの、全部持ってる。どうせ不細工だよとふて腐れてそっぽを向くあんたはすごい可愛いのにね。いつも相手に嫌われないように愛想笑いばかりして、そういう素顔を見せないことも上手くいかない原因の一つなんじゃない?


「恋人とかって難しいなぁ」
「ガキがなにナマ言ってんの」
「ジュリオだってガキじゃんか。あーあ。あー…」
「いつまでもそんなでいるならあんたのあだ名ポリチョリーノにするわよ」
「勘弁!」


けらけら、今度は腹を抱えた。忙しいわね。真っ先に頼ってくれるのは悪くないけど、
「女友達」
もういい加減この距離感も詰め時だと思うのよ。あんたがどうあれアタシが限界。誰も知らない無防備なあんたのこと、甚振りたくて愛でたくてしょうがない。
あんたが悲しいときはアタシも悲しもうじゃないの。笑うなら、それも一緒に。恋や愛なんかよりもっとずっと強い情がアタシたちにはあるでしょ。そう言い聞かせて騙し騙しここまで来たんじゃない、アタシがどうにかしない限りこれからも変わらないでしょうけど。男と女の関係、正統覆して裏側から撫ぜる感覚、やめられないわ。





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