※生徒×先生






「シーズーちゃんっ」


一瞬にして、静雄の眉間に皺が寄った。額に血管が浮く。
だからといって静雄が生徒の臨也に理不尽にキレることはない。
ただ静かにポケットに入れた拳を握りしめて、吸っていた煙草を噛み締めた。


「校内は禁煙ですよー」
「……臨也くん?先生と呼べ、って前に言わなかったっけかなー?それとここは喫煙スペースなんだよ」


携帯灰皿に煙草を押し付け、軽く頭を叩くと、臨也は少し痛がった。
ざまあみろ、と静雄が臨也の額を軽く小突くと、臨也は額を擦りながらまた痛がる。
その様子が面白くて何回も小突くと、臨也の顔がだんだんと歪められた。あ、やべ、やりすぎた。


「……先生、俺のことからかってる?」
「いや、だってお前まだ子供、だし……」


そうだ、こいつは子供扱いされるのが一番嫌いだって、前言ってたっけ…。
静雄はしまったと思うが時既に遅し。
臨也の顔が見る見るうちに不機嫌に変わっていき、眼は鋭く冷たくなっていってしまう。
その眼差しに射抜かれたように、静雄は動けなくなっていた。遂には、シズちゃんなんてもう嫌い、とまで言ってしまうほど。


「俺さ、子供扱いされるのが一番嫌いだって、言ったよね?」
「……言った…」
「なのにそういうこと言うってことは、俺に嫌われてもいいってことでしょ」


腕組みしながら臨也は冷徹に静雄に言い放つ。静雄はもう既に顔を歪ませていた。
立場が全く逆転してしまっていることに、静雄は気付いていない。
静雄は、端整な顔立ちと性格の良さからか生徒からは結構な人気があった。
本人もそれを受け入れているようで、いつもは短気な静雄も生徒たちとは笑顔で接することができていた。
だが、それを気に入らないのが臨也だ。だから学校にナイフを持ち込み、静雄をからかい脅し、キレさせて喧嘩へと発展させる。
それが日常茶飯事だったある頃、唐突に臨也が気持ちを暴露した。好きだ、と。
その時の静雄の驚いた顔と真っ赤に染まった頬を、臨也は今でも覚えている。
そして今のような関係になったのだが、偶にこうして喧嘩をするときがあった。今がまさにその時である。
それは臨也の言動がきっかけだったり、静雄が勝手にキレたりするのだが、今回は静雄が引き金。
珍しい出来事に、静雄は心底反省していた。けれど、臨也は機嫌を損ねて挙句の果てに嫌いだ、とまでも。
この発言は静雄の脆い心を酷く抉る傷となり、静雄は顔を俯かせて必死に涙をこらえた。


「大体さ、シズちゃん俺の嫌がることしかしないし、短気だし。きっと生徒もシズちゃんのことなんか憐れみの気持ちで話しかけてるだけなんだよ。ああ、シズちゃんって本当可哀想だよねー?でも、俺は慰めてなんかあげないよ。だってシズちゃんのこと大っ嫌いだし!……って聞いてる?ちょっと、せんせー?」


こういうときだけ先生、と呼ぶ臨也に腹が立つ。
臨也は、静雄からの異変をやっと受け取ったのか、その小さく震える肩に手を置く。
すると、その手はいとも簡単に静雄によって払われた。静雄はそのまま目を擦って鼻を啜る。
その仕草で静雄が泣いていることを、やっと理解した。


「え、嘘」
「手前に…っぐ……きらい、とか……いわれ、ひぐっ、と…なんか、とまんな、くて……」


静雄は両手で必死に涙を拭いながら、わけのわからない感情に戸惑った。
そんな静雄に、臨也は驚きながらも、口許に手を当てて顔を赤くして歓喜に満ち溢れた表情をしている。
遂には、ここが校内の喫煙スペースだということも忘れて思い切り、その震えた体を抱きしめた。
静雄はその行動に慌てて臨也を引き剥がそうとするも、慈しむように頭を撫でる手に引き剥がそうとする気持ちすらなくなってしまう。
おどおどと慌てた結果、その手は臨也の背中に落ち着いた。


「先生可愛い、食べちゃいたいぐらい」
「な、て、てめっ…先生に向かって…!」


そんなことを言いながらも、瞼にキスを一つ落とせばすぐに静かになる静雄に、臨也は微笑を浮かべる。
そのまま腰を撫でると、静雄の体がビクリと強張った。
もう涙は止まっていた。


「こんな可愛いことしちゃってさ…また先生の家行くから、覚悟してね」
「…あ?別に家に来るのは構わねえけど……」


眉間に皺を寄せて不機嫌な顔をつくって答えると、臨也は乾いた声で笑った。
静雄がわからずに首を傾げていると、臨也はわからなくていいんだよ、と言って耳に髪をかけてその真っ赤な耳を指で擽る。
なんて、幸せな時間なんだろう、と。
学校ということも忘れて、静雄は幸せそうに目を閉じた。



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黒羽桃様よりフリリク頂きました!

うわあああああ貼るの遅くなってすいませんん!!!
素敵過ぎるお話ありがとうございます(^^*)
下×上好きの私には鼻血モノです(((
シズデレェェェェェェェェッ!!!!!
これからもstkさせてくだs(((
ありがとうございました!応援してます!




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