1/3 「名前が好きだ。俺と付き合ってほしい」 …え?え? ………好き? 「名前?聞いてる?」 「…へ、え?」 無意識に返事をして、カカシを見る。 あ、目合った。 いつものやる気なさそうな顔をしているのに、声は真剣だった。 「外、出よっか。 テウチさん、代金今度払いますんで」 「お、おう!」 私の手を引っ張って、カカシはずんずん先へと進んでいく。 歩くの速いわね…。 転びそうになる足を必死に動かす。 まだ追いつかない頭が何も考えさせてくれなくて。 真っ白なまま。 カカシが歩みを止めた場所はどこかの屋上。 「名前」 掠れた声で私を呼ぶ。 「いきなり言って、ごめん」 「…え、ええ。別にいいわ。」 カカシの顔を見ないまま返事をする。 今更だけど物凄く恥ずかしい。 「最初に会った時から、名前のことが気になってたんだ」 「……」 そうだったの、 私は、あなたのこと、 言いたいことはあるのに、声が出ない。 「…あと数時間は木ノ葉にいなきゃいけないけど、俺が近くにいると嫌だろうから、帰る時間になるまで他の奴と行動してちょうだい」 返事をしなかった私を、カカシは悪い方にとったらしい。 「…や」 「え?」 「いや、カカシがいい」 「え」 「私といて。カカシ以外は嫌だわ」 カカシは目を見開いた。 カカシと一緒にいたい。 恥ずかしさを感じる前に、理性が止める前に、言葉が出てた。 こんなこと言ってるんだから、告白された後も嫌いにはなってないみたいね… 「名前」 呼ばれて、屋上を出ようと先を歩いていた足を止めて振り向けば、 「カカ、シ…」 ぎゅっと優しく抱きしめられた。 「ねぇ、こうされてどう感じる?」 「すごいドキドキする…」 心臓が壊れそうなくらい鼓動を打っているのがわかる。 すごく心地良い…。 そう感じていると、カカシが、ゆっくりと腕を解こうとした。 「まだいや…!」 私はぎゅっとカカシを抱きしめた。 「!」 「カカシ…私あなたのこと好きなのかも」 だって今すごく、こうやっていて安心するから。 ずっとこのままでいたいって思うから。 そう思ってにこっと笑いかけたら、カカシの顔が近づいてきて、キスされた。 唇の感触にうっとりしたのは、あまりにも恥ずかしくて言えない。 「カカシ、」 「好きだ名前」 さっきよりも強く抱きしめられる。 「…私も」 「ついにか!」 「ええ、まあ」 「よくやったな!私も安心したよ」 「…何かあったの?」 火影様に報告に行くと、満面の笑みで迎えてくれた。 「いやいや、何でもないよ。 それよりさっさと報告に行きな」 「今から花隠れにですか?」 「そうだ。結婚するとな」 「「結婚!?」」 私たちのびっくりした顔を見て、きょとんとした火影様。 「もしかして…まだなのか?」 「お互い好きってわかっただけで…まだ結婚とかは…」 「決めてない、のか…?」 「はい…」 火影様の表情がみるみる変わっていく。 「…今すぐ結婚しろ!火影命令だ!!」 「えぇ!?そんな無茶な!」 「無茶でもナスでも何でもいい!結婚しろ!」 「えぇ…」 火影様の無茶苦茶な言葉にたじたじでいると、カカシがとんでもないことを言ってきた。 「俺は今すぐ結婚してもいいよ?」 「え!? だ、だってまだ両思いってわかっただけじゃないの…!」 「それがわかれば十分じゃない?名前は里も違うし、このままだとなかなか会えないのは目に見えるよ」 「確かにそうだけど…」 「結婚して同居しちゃえば、こんな問題は簡単に消化できるよ?」 「でも…」 それでも尻込みしている私を見て、カカシが優しく語りかけてきた。 「名前。俺は初めて、一人の女性といつも一緒にいたいって思ったんだ。 それが名前だよ」 「カカシ…」 「今すぐが嫌なら強制はしない。でも、いずれは名前と結婚したいと思ってるから」 「…そうね。私もカカシといつも一緒にいたいわ。 …結婚、しましょうか」 恥ずかしさで顔が赤くなった私を見て、カカシは満面の笑みで私を抱きしめた。 「ありがとう、名前。 じゃあ、とりあえず花隠れに報告に行きますか」 「うん」 ← 戻 → |