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翌日、右手首の腫れがひかないまま、待機所で任務を待つ私。
「なんか、湿布くせ―な」
「湿布臭くて、どうもすみませんね」
「そうだ、昨日はカカシに会えたか?」
「カカシ?」
アスマは私の顔を見るなり、表情を変えて、一目散にゲンマのとこへ逃げた。
きっと、般若のような顔をしているのかもね。
私も今朝鏡を見てびっくりしたわよ。
眉間とおでこに、皺が寄ってて直すのに苦労したわ。
「名前」
皺の原因を作った人のお出まし。
カカシの頬も、少し腫れているように見える。
思いっきり殴ったのに、それしか腫れてないって……私ってば、殴り損よね。
「昨日はごめんね。手首は大丈夫?」
「大丈夫なんじゃない? 湿布臭くて、迷惑掛けてるみたいだけど」
「お詫びにはならないかもしれないけど今夜、一緒に夕飯食べに行こう?」
夕飯なんかで許すほど、簡単な女じゃないんだから。
そっぽを向くと、カカシは私が向いた方に移動し、じっと私を見つめる。
そ、そんなに見つめないでよ。
何よ、その捨てられた子犬みたいな眼は。
そんな眼で見つめられたら……。
「カ、カカシの奢りなら、一緒に食べてもいいけど!」
「も、もちろんだよ! 名前の好きなもの食べようね!」
まるで、食べ物に釣られたみたいだけど違うわよ。
捨てられた子犬みたいな眼に負けただけ。
「名前さ―ん、綱手様がお呼びですよ」
受付でよく見かける中忍が、私を呼んだ。
私は呼び出しに応え、待機所の外へ向かおうと、座っていたソファーから立ち上がった。
その時、目が合ったアスマは、やれやれといった表情をした。
「忘れたら許さないからね」
「名前」
「なに?」
「これ、渡しておくね」
そう言ってカカシが渡してくれたのは、可愛らしいリボンのついた鍵。
どこの鍵? 秘密の部屋? それとも、宝物庫?
「オレの家の合鍵」
「合鍵?」
「これがあったら、もっと一緒にいる時間が増えるでしょ? 朝一で作りに行ったんだ」
たしかに、会う時間は増えると思うけど。
こんなの貰ったら、毎日カカシの家に行きそうで怖い。
「毎日来てくれたらオレ、すっごく嬉しいからね」
「えっ!?」
「家の中でも、デートができるでしょ?」
私は、カカシを思いっきり抱きしめた。
それはもう、肋骨が折れそうなくらいの力で。
「名前……く、苦しい」
周りからは、「見せつけんなー」って、言葉が飛んでくる。
だって嬉しいんだもん、仕方ないでしょ。
「今日の夕飯、カカシの家で食べてもいい?」
「もちろん」
「天ぷらでもいい?」
「それはちょっと」
私の好きなもの食べようねって言ったくせに。
それじゃあ、他の好きなものを一緒に食べてね。
そうだ、帰りに来年のカレンダーも買っていこう。
カカシとの2人の予定が、いっぱい書けるようなやつをね!
それと、においの少ない湿布もね。
***
→あとがき
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