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「やっぱり面白いな!」

「さすが自来也様。次の作品も期待しまくりだぜ」

映画館から、わらわらと出てくる観客。
見事に男ばっかり。
人の出もまばらになった頃、すっごく嬉しそうな顔をしたカカシが、パンフレットを持って出てきた。

「名前! もしかして、名前も観に来てたの!?」

そんなわけないでしょ。
自来也様には悪いけど、見たいと思わないわよ。

「すっごく面白かったよね! また観に来ないと」

「ねえ、カカシが楽しみにしてたのって、この映画のこと?」

「そうだよ? 昨日は眠れなかったんだ!」

なーにが、「眠れなかったんだ」よ。
私の気合いはどうしてくれるのよ。
五代目に賄賂まで贈って、今夜は任務を入れないでもらったのに。

「そういえば名前、今日はなんかオシャレだね」

「……」

「まさか、オレ以外の男とデートしてたの!?」

今日のオシャレは、カカシとのデートのためよ!
寒い中、何時間も待ったのに!
それなのに、他の男とのデートを疑うなんて……。

「バカ―――――!」

私は大声を出しながら、カカシの顔面にめり込むようなパンチを喰らわした。
宙に高く舞い上がるパンフレット、地面に転がるカカシ、心なしか“ゴキュッ”と音をたてた手首。

「なにするの!?」

「今日は私とのデートの日でしょ! 何が映画よ!」

「デ、デート……あっ!」

思い出したカカシは、急いで立ち上がり、私の元に駆け寄ってきた。

「ご、ごめんね! つい、映画の方に気を取られちゃって」

「何が、ついよ! いった――い!」

カカシが私の右手首を掴んだ瞬間、激痛が走った。
慌てて手首から、手を離したカカシ。

「ごめんね、名前! どこが痛いの?」

「だからそこだってば!」

ボケてるのか知らないけど、カカシは痛いって言ってるのに、なおも私の手首を掴む。
折れてはないと思うけど、この痛みは半端じゃない。

「離してよ!」

「痛いなら病院行かないと!」

「もう、触らないでよ!」

私は痛くない左手で、思いっきりカカシの右頬を殴った。
利き手じゃないのに、さっきよりも勢いよく地面を転がった。
その勢いは、隣の建物の板塀を損傷させるほどだった。

「私のウキウキ時間を返してよ、バカ――――!」

気絶しているらしいカカシを放置して、私はその場から走り去った。
家に帰ると、さっきより右手首の痛みが増し、腫れてきていた。
私は1枚だけあった湿布を貼って、カレンダーの前に立つと、黒の油性ペンで今日のところを黒く塗りつぶした。

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