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その頃の私は、その人が結婚していたかはたまた独身だったのかは知らなかった。
ただ、会うといつも話し掛けてくれる、とても感じのいい人だった。
その日は、門限を破ってしまい、急いで家へと帰る途中だった。
「名前ちゃん、どうしたの?こんな時間に。もう暗いから危ないよ?」
「い、急いでるの!お母さんに怒られちゃう!」
「なら僕が一緒に帰ってあげるよ。それなら怖くないだろう?」
「う、うん…。」
そうしたら、おじさんもお母さんに怒られちゃうんじゃないかな、なんて思ったりもしたんだけど、暗がりに怖かったこともあって、私はおじさんの差し出された手を握ってしまった。
「おじさん、こっちじゃないよ?私のお家、あっちだよ?」
おじさんの手に、力が入ったような気がして、私はだんだん怖くなった。
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