1/1 クロロは本を読んでいる。 「ねぇ、クロロ」 一応名前を呼んでみたけど、やっぱり反応はなかった。 冷静な顔で、次のページをめくっている。 クロロは本を読み始めると、周りが見えなくなる。 自分の世界に入り込むのよね。 はぁ、とため息をこぼす。 まあ、一応声かけたわけだし、反応しないクロロが悪いんだからね。 そう内心で呟いて、私はクロロの背中に自分の背中を押し当て、本を開いた。 クロロはあんまりこれが好きじゃないらしい。 「身動きがとれなくなる」って前に言ってたけど、本を読んでる時のクロロは、ページをめくる以外に微かでも動いてるのを見たことがない。 面倒だから、口には出さないけど。 栞を外して、行を目で追う。 この前仕事だったから、このあとどうなるのかすごく気になるのよね。 クロロのことなんか考えてないで、早く読まなきゃ。 いつからかわからないが、背中に温かみがある。 真剣に本を読んでるナマエの気配が、背後から伝わってくる。 俺もナマエと同じように、ページをめくる。 かさりと重なる音に、ナマエは気付いているだろうか。 今、ナマエはどんな本を読んでいるんだろう。 後ろから、息を飲んだ音がする。 どんなシーンなんだ? ナマエのことばかり気になる。 だからこの体勢は好きじゃないんだ。 俺は本に栞を挟んだ。 軽く目をつぶって、ナマエの様子を探る。 読書は今日はもうやめだ。 代わりに、 君の心を読んでみようか (あ、今笑った) (後で内容を聞いてみるか) 110328 ← 戻 → |