HUNTER×HUNTER短編 | ナノ


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クロロは本を読んでいる。


「ねぇ、クロロ」


一応名前を呼んでみたけど、やっぱり反応はなかった。
冷静な顔で、次のページをめくっている。

クロロは本を読み始めると、周りが見えなくなる。
自分の世界に入り込むのよね。
はぁ、とため息をこぼす。
まあ、一応声かけたわけだし、反応しないクロロが悪いんだからね。
そう内心で呟いて、私はクロロの背中に自分の背中を押し当て、本を開いた。
クロロはあんまりこれが好きじゃないらしい。
「身動きがとれなくなる」って前に言ってたけど、本を読んでる時のクロロは、ページをめくる以外に微かでも動いてるのを見たことがない。
面倒だから、口には出さないけど。
栞を外して、行を目で追う。
この前仕事だったから、このあとどうなるのかすごく気になるのよね。
クロロのことなんか考えてないで、早く読まなきゃ。







いつからかわからないが、背中に温かみがある。
真剣に本を読んでるナマエの気配が、背後から伝わってくる。
俺もナマエと同じように、ページをめくる。
かさりと重なる音に、ナマエは気付いているだろうか。

今、ナマエはどんな本を読んでいるんだろう。
後ろから、息を飲んだ音がする。
どんなシーンなんだ?
ナマエのことばかり気になる。
だからこの体勢は好きじゃないんだ。
俺は本に栞を挟んだ。
軽く目をつぶって、ナマエの様子を探る。
読書は今日はもうやめだ。

代わりに、





(あ、今笑った)
(後で内容を聞いてみるか)


110328


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