1/1 「…説明は以上だ。解散していいぞ」 明日の仕事について団員たちに役割を伝え終え、ふぅと息を吐いた。 喋りすぎたな。喉が渇いた。 水を飲もうと自室に戻ろうとすると、フィンクスが俺を凝視していた。 そう言えば、さっき説明していた時も俺をあんな風に見ていたな…。 「フィンクス。さっきから俺を見て、何なんだ?」 話しかけると、フィンクスはあからさまにビクッと震えた。 それに目が泳いでる。 一体何なんだ。 「い、いや、団長、それ…」 「フィンクス!」 フィンクスが言いかけた言葉を、マチが遮った。 怒鳴られたフィンクスは、「わあったよ」とマチに返事をした。 それって、何のことだ。 「俺に何かついているのか?」 「な、何でもないですよ」 パクノダの方を見て聞くと、曖昧な笑顔を浮かべて困っているようだった。 「シャル、確か鏡持ってたよな?貸してくれ」 「えっ!?い、いやいいよ、団長何にもついてないし」 シャルが明らかに狼狽えた態度を取る。 決まりだな。 「嘘だ。皆、俺に何を隠しているんだ」 「それが気になるんじゃないんですか?」 シズクが本から顔を上げ、俺を指差した。 「何だ?どこのことだ」 「鎖骨辺りの、蚊に刺されたような跡です。 変ですよね、今冬だし蚊なんていないはずなのに」 途端、周りから「あちゃー…」と声がした。 「シャル。鏡を貸せ」 諦めた表情のシャルから鏡を受け取り、鎖骨を映す。 「な……」 そこには、確かに蚊に刺されたような跡があった。 しかしシズクの言った通り、今は冬。 蚊なんているわけもない。 残る選択肢は…… 「ナマエ…!!」 俺は部屋でぐうたらしているであろうナマエへと早足で向かう。 ナマエは明日の仕事のメンバーに含まれていないので、説明を聞かず部屋でだらだらしていると言っていた。 「シャル」 歩きながら、まだ持っていた鏡をシャルに投げ返した。 「ナマエ…どんまい」 ヒビの入った鏡をキャッチしたシャルが呟いた言葉は、俺には聞こえなかった。 「ナマエ!」 ドアを乱暴に開け、ナマエがいるか室内を見渡す。 ナマエはベッドですぴーと幸せそうに寝ていた。 「起きろ!」 「うー…クロロ?おはよ…」 むにゃむにゃと起きるナマエ。 普段なら可愛いと頭を撫でるが、今はそうはいかない。 「おはようじゃない。これはどういうことだ」 鎖骨を指差す。 「あー、キスマーク!ちゃんとついたんだぁ」 ナマエは嬉しそうににかっと笑った。 俺の鎖骨辺りについていた跡は、キスマークだった。 恐らくは、昨晩ナマエと一緒に寝た時につけられたのだろう。 ナマエより先に寝付いてしまったことを後悔した。 「ナマエ。お前がこんなものをつけたせいで団員に見られてしまった。どうしてくれる」 「えーうそぉ。…あ、上半身コートだけだね。冬だから中着ると思って…」 もごもごと言いにくそうに小声で喋る。 「クロロ…ごめん、ね?」 ナマエはちゃんと反省しているようで、申し訳なさそうに俺を見て謝ってきた。 「ナマエ」 優しく笑いかけると、ナマエはホッとしたように笑った。 「お仕置きだ」 俺はそのくらいで許すほど、 甘くはない。 ナマエの顔が、固まった。 「行くぞ」 次の日。 仕事に行くメンバーは次々に外へ出ていく。 俺はうつむいているナマエに近付いた。 「行ってくる。再度言うが、広場から離れるなよ」 「………うん」 ナマエは冬なのにタンクトップとホットパンツを着ている。 露出している腕や足は、蚊に刺されたように赤い跡がいくつもあった。 「これに懲りたら、もうしないことだ」 俺はナマエにキスをして、ホームから出た。 「…団長にやるからだ。どうなるかくらい予想つくだろうが」 クロロが出ていき、仕事に行くメンバーが全員出ていった。 フランクリンに諭され、ナマエは体育座りをして体を小さく丸める。 「フィンクスやシャルナークがいなくて良かったな」 「もしいたら絶対にからかうね。 ナマエ、もう団長にイタズラなんてしない方がいいよ」 ボノレノフとコルトピが口々に言う。 「そうだぜ。俺達だってここを動くなって命令されたしよ。全く、団長もガキくせえよな」 ノブナガがため息を吐いた。 ナマエを始め、仕事のないメンバーは広場から動かないようにと、団長命令を出されてしまったのだ。 「…皆、ごめんね」 小さく謝る。 クロロに軽いイタズラのつもりでやったのに、周りの人にも迷惑をかけてしまった。 「もういいから、気にすんな。 団長達、早く帰ってくるといいな」 フランクリンは頭をぽんと撫でた。 全身にキスマークがついたナマエは、うつむいたまま小さく頷いた。 罰ゲームはキス地獄 (だからって、こんなにやらなくたっていいじゃない!) タイトルお借りしました 「ミュート」 ---------------------- 110220 裸コートの団長が書きたかった。 0328 修正しました。 ← 戻 → |