1/1 「ルーくん」 「その呼び方やめろ」 「えー何で?可愛いじゃん」 心底嫌悪する表情で抗議しても、こいつは聞く耳を持たずにへらりと笑ってきた。 その笑顔は馬鹿さ丸出しで。 全く、見た目も中身も阿呆な奴だ。 「お前の低脳ぶりはその顔を見ていればすぐにわかるな」 俺が古書に目を戻しながら嫌味を言っても、 「んーと、それはわかりやすくていいってことだよね? ルーくんったらそんな遠まわしに褒めなくてもいいのに。 照れ屋さんなのかな?」 嬉しそうににやにやと笑うこいつに段々と頭痛がしてきた。 「…もういい」 このままこいつに付き合っていたら頭がおかしくなりそうだ。 俺はソファーから立ち上がった。 読んでいた古書も、今はもう読む気になれない。 「ルーくん、どこ行くの?」 後ろからナマエの声がした。 言わないとどこまでも着いてきそうな気がしたので、風呂だ、と短く伝える。 「私が背中流そうか?」 「いらん」 いたって真面目なその声を一言で切り捨て、浴室のドアを閉めた。 服を脱いで、シャワーの蛇口を捻る。 あいつは、食えない奴だ。 ナマエは変化系の念能力者で、性格も典型的なそれだ。 ヒソカと同じで、何を考えているかいまいち掴みきれない。 すぐに茶化して本心を見せようとせず、その阿呆な表情で全てを有耶無耶にする。 ナマエはヒソカの女バージョンみたいな感じと言ったらわかりやすいかもしれない。 ただヒソカと違うところは、あの変態さがないところか。 いや、俺に背中を流そうかと聞く時点でもう同類かもしれない。 はっと気付いた俺は、頭を軽く振ってナマエを思考から追い出す。 ナマエから離れるためにシャワーを浴びているのに、あいつのことを考えてどうするんだ。 全く、俺もあいつに頭のネジを緩められたらしい。 ざっと浴びて、浴室から出ると、そこには新しい下着が置いてあった。 「…」 誰が置いて行ったかなんてわかりにわかり切っている。 今はもういないあいつだ。 …俺は、あいつのこういうところが嫌いだ。 そして、胸が無性にむず痒くなって変にドキドキする自分も嫌いだ。 何故か、なんて考えたくもない。 くそ、と言う代わりに、ふん、とため息をついた。 心惑わす (あいつといるとペースが乱れる) 「私もルーくんのためにお風呂に入ろうっと。 きっと私とベッドでいちゃいちゃしたいからあのタイミングで入ったんだよね!」 クロロの頭痛はずっと治らない。かもしれない。 ---------------------- 110201 ルシルフルのルーです。 ← 戻 → |